新しい仕事を始めるとき、多くの人の前に立ち塞がる壁が「納得したい欲求」です。
「なぜその行動が必要なのか?」と尋ねても、よい返答をもらえずに悶々とした感情だけが残った経験は多くの人が持っているのではないでしょうか。
しかし、ちょっとしたコツで納得できなくても先に進めるようになります。
この記事では、納得できなくても先に進むための手順についてお伝えしているので、よかったらお試しください。
納得できなくても先に進むための手順
納得できなくても先に進むためには、次の手順をおこなうことが有効です。
- マインドセット:納得しないまま行動することは善or悪?
- 行動とゴールの明確化:何をすべきか?
- 行動への抵抗感の明確化:なぜやりたくないのか?
- 抵抗感の妥当性の検証:その理由は現実的か?どの面から見ても絶対に正しいか?
- 実践から得た気づきの言語化:行動して分かったことは何か?
この一連の工程を繰り返していくことで、「納得するために行動するのだ」というメンタルが身につき、納得しないまま行動するための習慣が作られます。
手順①:マインドセットする
マインドセットとは、行動を肯定するような信念をインプットすることです。
マインドに沿った行動は抵抗感が和らぐため、どのような考え方を持っているかが重要になります。
ここでセットしたいマインドは、「納得しないまま行動する自分」を肯定できるものです。
具体的には、次のようなマインドが挙げられます。
- 納得できなくてもまずは実践してみる
- 納得するために実践して検証してみる
- 最初の3週間は納得することを後回しにする
- 行動するかの基準は理屈ではなく相手への信用度合いにする
手順②:ゴールを明確にする
納得しない状態での行動を肯定するマインドセットをしたら、取り組む必要のある行動のゴールを明確にしていきます。
行動に伴う不安や影響にいきなり目を向けると、次のような疑念がたくさん湧いてきてモヤモヤ思考から抜け出せなくなるためです。
- 影響:この行動は何につながるんだろう?
- 目的:この行動にはどんな意味があるんだろう?
- 必要性:この行動は本当に実施しなければならないのだろうか?
行動のゴールとは、その行動をすることで何を達成したいのかということです。
まずは感情や疑念を一旦脇に置き、その行動をしてどんな状態になったらよいのかをはっきりさせてください。
例.納得できないけれど先輩に言われたからSNS投稿をおこなう
【焦点を合わせたい】
・行動:SNS投稿を毎日おこなう
・ゴール:1ヵ月で30投稿する
【一旦脇に置いておきたい】
・影響:この投稿をしてフォロワーが増えるのだろうか?
・目的:毎日投稿することにどんな意味があるのだろうか?
・必要性:フォロワーを増やすにはもっと良い方法があるのでは?
手順③:先に進めない理由を見定める
行動とゴールが明確になったら、「先に進むことを阻害している抵抗感の正体」を探っていきます。
先に進めない理由を見定めることで、納得するために必要な情報が明確になるためです。
次のような質問を自分に問うことで、先に進めない理由のヒントが見つかるでしょう。
- なぜ納得したいのか?
- 納得するとどうなるのか?
- 納得したい欲求はどこからくるのか?
- 納得しないで行動するとどうなるのか?
- 納得しないことの何を恐れているのか?
- 納得しないで行動したときの最悪の未来は何か?
- 納得しないで行動しようとするとどんな感情が生じるのか?
準備中:不安や恐怖をエネルギーへと変える方法
手順④:先に進めない理由と向き合う
先に進めない理由を見つけたら、その理由の妥当性を検証していきます。
納得したい欲求の核心が明らかになることで、はじめてその欲求を客観的に観察できるようになるためです。
本当にその欲求の正体が、自分にとって重要な問題なのかを確かめてみてください。
たとえば「失敗をしたくないから納得したい」という理由なら、次のようなことを自問自答することが検証作業になります。
- 失敗するとどうなるのか?
- 失敗した最悪の未来は何か?
- 本当にその未来が訪れるのか?
- 失敗した未来の損失は本当か?
- どれほどの確率で失敗するのか?
- どれほどの成功確率があったら安心できるか?
- もっと高い成功率の方法は見つけられるのか?
- 自分にとっての失敗とはどういう意味なのか?
- 自分はなんのために成功したいと考えているのか?
手順⑤:行動して体感する
納得したい欲求と深く向き合ったら、実際に行動することでその理由を検証していきます。
自分の不安感がどれほど正しいのかは、実際に行動してみなければ分からないためです。
しかし、不安を抱えたまま行動することは大きな勇気が必要です。
行動するための勇気を育むためには、「納得できないから行動しない」ではなく「納得するために行動する」というマインドを持つとよいでしょう。
もしも自分1人では実行できなかったり、内省が足りないと感じたりする場合は、コーチングのような行動を促す専門家に相談してみてください。
準備中:コーチングとは
手順⑥:体感を振り返る
実際に行動をしたら、そこで得た体験を振り返ります。
成功体験でも失敗体験でも、振り返らない限りその経験は自分の糧にならないためです。
今回の一連の手順をそれぞれ振り返り、そこから何が分かったのか、次はどうすればよいのかを検討してみてください。
振り返った内容を他者に話すことで、さらに強く記憶に残すことができます。
準備中:振り返りの方法
納得できないと先に進めない主な理由8選
ここでは、納得できないと先に進めない主な理由を紹介していきます。
「納得できなくても先に進むための手順」における「手順③:先に進めない理由を見定める」の参考になれば幸いです。
理由①:失敗を恐れているから
自分にとっての失敗を恐れることで、納得したい欲求に駆られることがあります。
「この行動は安全である」と確かめるために、見通しを立てて納得感を得ようとしているケースです。
失敗が怖いと感じていても、失敗自体を恐れているわけではありません。
失敗することが原因で立ち止まっている場合は、自分が何を恐れているのかを言語化してみてください。
そしてその恐れの正体を検証して、それほどまでに恐れる必要があるのかを確かめてみるとよいでしょう。
例.教わったプレゼン方法に納得できない
・理由:プレゼンに失敗することが怖い
・恐れ:失敗したら一生周りにバカにされる
・恐れ:失敗したら一生昇進の機会がなくなる
・恐れ:失敗したら私の社会人人生がどん底に落ちる
・検証:プレゼンで悲惨な失敗をした人に質問する
準備中:失敗の乗り越え方
理由②:そもそも行動したくないから
行動自体に抵抗感があるために、納得できないときがあります。
納得より先に行動への抵抗感があり、どのような意見にも耳を傾けたくないようなケースです。
行動自体への抵抗感とは、次のようなものが挙げられます。
- ずるい
- 難しそう
- 大変そう
- はずかしい
- つまらなそう
- めんどくさそう
- 強要させられている
行動自体に抵抗感がある場合は、「納得したい」のではなく「納得したくない」ことに気づくことが重要です。
抵抗感を生み出している感情との折り合いをつけることが、納得せずとも行動するために必要な条件になります。
感情との折り合いのつけ方は、主に次の2つのパターンです。
- その感情を抱かなくする
- その感情を抱きながらも行動できるようになる
例.親の手伝いをすることに納得できない
・理由:私ばかりが大変で親はズルい
・その感情を抱かせない:親も忙しいのだから別にずるくない
・その感情を抱きながらも行動する:器の広い自分でありたい
準備中:仕事におけるやらされている感の解消方法
理由③:非効率的だと感じているから
教わった方法の効率性に疑問を抱くと、納得できなくなるときがあります。
「もっと良い方法があるのではないのか?」と、その方法の妥当性について尋ねたくなるようなケースです。
非効率的だと捉えてしまう理由は、次のようなものが挙げられます。
- 行動が大変そうだから
- 行動の目的が不明瞭だから
- 行動と結果の因果関係が不明瞭だから
- 相手のことを無能だと思っているから
多くの場合、相手がベストだと考えているものを教えてもらえます。
そのため、もっと良い方法がないのかと尋ねたとしても、あまりよい返答はもらえないでしょう。
もっと効率的な方法を知りたい場合は、締切を作って自分で模索するしかありません。
締切内で複数の仮説を立てて、その中でもっとも効率的そうな方法を検証してみてください。
例.勉強方法に納得できない
・理由:そんなに多くの時間を割きたくない、もっと良い方法があるはず
・検証①:成績のよい人から勉強方法を教わる
・検証②:複数の方法を試してよさそうなものを選ぶ
準備中:面倒くさいの克服方法
理由④:自分が正しいと思っているから
自分の行動の方が正しいと考えている場合、相手から教わる行動に納得できなくなります。
相手の意見を受け入れることは自分の間違いを証明することになり、不快な感情が生じてしまうためです。
この状態で相手に言われた通りの行動をしたとしても、相手の間違いを証明するためにわざと手を抜くこともあります。
そのため、まずは「自分の行動がすべての面において優れている」という思考を手放すことから始めてください。
自分の正しさに執着しなくなることで、他者の行動を取り入れる余裕が生まれます。
その余裕があれば、次のようによりよい方法を模索することができるようになるでしょう。
- 実際に他者の行動を試してみてフェアに比較する
- 自分と他者の行動のいいとこどりをした新しい行動をつくる
例.教わったセールス手順は納得できない
・理由:私の手順の方が効果的なはずだから
・検証①:私の手順ではお客様が理想を持っていないと売れない
・検証②:私が苦手とするお客様に今回のセールス手順を使ってみよう
理由⑤:相手自体を信用していないから
自分に意見がなくとも、相手の意見に納得できないときがあります。
相手自体を信用できず、相手の意見に対して「でも」と反射的に答えてしまうようなケースです。
これは論理だけではなく、相手への印象も納得しやすさに影響するためです。
相手への嫌悪感から意見を受け入れられない場合は、まずは相手との関係性を築くことから始めたほうがよいかもしれません。
例.SNS投稿のテンプレートを教わったが納得できない
・理由:その人のやり方がなんだか気に食わない
・検証①:私はその人に対してどんな感情を抱いているのだろうか?
・検証②:私はその方法のどこが気に食わないのだろうか?
・検証③:私はその方法よりも有効な手段をすぐに見つけられるだろうか?
準備中:アドバイスを受け取れない人の心理とは
理由⑥:行動する必要性を感じていないから
行動する必要性を感じられないために、納得したい欲求に駆られることがあります。
「わざわざ重い腰を上げる必要が本当にあるのか」を確かめたいというケースです。
必要のない行動を削ることは、合理的であり必要なことでしょう。
しかし、行動における影響ははっきりと分からないものも多く、必要性を見定めることは実は非常に難しい議題です。
一見無駄だと思える行動でも、実は何かしらの意味があることがよくあります。
少ない経験や狭い視野で必要性を議論しても、納得できる答えはなかなか見つからないため、自らでその必要性を検証することをおすすめします。
例.毎週掃除をするルールが追加されたことに納得できない
・理由:部屋が汚くても生きていける、時間の無駄
・検証①:整理整頓具合の影響を書物から調べる
・検証②:実際にきれいな部屋で働いてみて皆の影響を記録する
理由⑦:再現性の高い方法を確立したいから
再現性の高い方法を確立するために、根掘り葉掘り尋ねて納得したくなることがあります。
すべてのパターンや因果関係を洗い出し、マニュアルのようなものを作りたいというケースです。
実行前に失敗の想定パターンを洗い出し、対策を練ることはよいことでしょう。
しかし、机の上だけではすべてのパターンを洗い出すことはほぼ不可能であり、実践しながらマニュアル作りをすることが必要です。
もしもその実践が怖くてできないのであれば、それは失敗への恐れが原因だと考えられます。
再現性の高い方法を確立したいのではなく、失敗を恐れているのだということを認識して、失敗への恐れに対処することを優先してみてください。
準備中:完璧主義を手放す方法
理由⑧:答えはどこかにあると信じているから
もっとよい答えがあるはずだという考えによって、納得できなくなることがあります。
「よい方法が見つかるまで行動しない」という選択をするようなケースです。
よい答えはどこかにあるかもしれませんが、それは自分で見つけなければなりません。
他者から教わることを待っているだけでは運任せになり、多くの時間やお金を浪費してしまうことになるためです。
今ある答えに不満があるならば、締切を作って答えの仮説を複数用意しましょう。
そして締切内に用意できなかった仮説は諦めて、今ある手札から最高の方法を使って挑戦することをおすすめします。
準備中:自信のつけかた
納得できないと先に進めない性質との付き合い方
ここでは納得できないと先に進めない性質とうまく付き合っていく方法についてお伝えしていきます。
付き合い方①:長所を活かそう
納得できないと先に進めないという性質は、「納得することへの欲求が強い」とも言い換えられます。
他の人が何も考えずに行動することに対して、自分なりの理解をすることへのモチベーションが高いということです。
初動は遅いかもしれませんが、深く理解して納得できた途端にスピードが跳ね上がります。
初動の遅れを取り戻すだけではなく、理解していない人にはたどり着けない地点にまでたどり着けるでしょう。
この納得するための欲求を上手に活用するには、納得できるための術を身につけることが重要です。
「他者に尋ねる」だけではなく、自分なりに納得するための仮説を検証していくことで、この長所を十分に発揮できるようになります。
準備中:計画を後ろ倒しにしないためには
付き合い方②:短所は応急処置で十分
納得できないと先に進めないという性質の短所として、自分を納得させることを他者に強要することが挙げられます。
納得するためにさまざまなことを尋ねますが、求めている返答をもらえることは滅多にありません。
そのとき、以下のように他責思考によって行動しないことを肯定してしまうことがこの性質の短所です。
- 尋ねても説明できないのだから相手が悪い
- 納得できないのだから行動しなくてもいい
- それは課題かもしれないが具体的な策がないなら採用しなくていい
この短所への対策は、問題が起きない程度に留めることをおすすめします。
納得したい欲求自体を消失させるのではなく、納得したい欲求を他人任せに満たそうとしないことで、この性質が問題を起こさなくなることを目指しましょう。
長所と短所は表裏一体の関係ですので、短所のすべてに対処しようとすると長所も消失してしまうことに注意してください。
準備中:他責思考の直し方
付き合い方③:未知を探索する勇気を持とう
納得したい欲求を十分に活かすためには、未知を探索する勇気を持つ必要があります。
調べるだけで納得できる情報が見つからないならば、最後には自分で検証するしかないためです。
この検証作業は、失敗することへの恐れや周囲からの視線によって強い抵抗感が生じます。
そのときに未知を探索するための勇気がないと、検証することを諦めて行動しなかったり考えること自体をやめてしまったりするでしょう。
未知を探索するための勇気を育むためには、「納得しないまま行動してよかった」という成功体験を積み重ねることが重要です。
未経験分野への挑戦のような、失敗しても痛くないことに対して「納得しきる前に行動する」を徹底してみてください。
その挑戦から以下のような成功体験を得られることで、未知を探索するための勇気が育まれていきます。
- 行動することで納得できた
- 失敗しても大してバカにされない
- 考えるよりも行動したほうが早かった
- 教える側は行動している人への態度が温厚だ
- 教える側は行動していない人への態度が冷酷だ
準備中:勇気を出す方法
納得の3つの種類
ここでは、納得することの種類についてお伝えしていきます。
納得したいと感じたとき、どの種類の欲求を満たしたいのかを区別することで情報収集が効率的になるでしょう。
種類①:必要性が分かる
方法や行動に対する必要性に納得したいという種類の欲求があります。
「私が今それを実施する必要はあるのか?」という疑問を晴らしたいようなケースです。
必要性に納得をしたいときの兆候として、次のような疑問が生じることが挙げられます。
- なぜ必要なの?
- なんで私なの?
- なんで今なの?
- それは無駄じゃないの?
- それを実施してどうなるの?
種類②:具体的な手順が分かる
成功する具体的なイメージに納得したいという欲求があります。
「私は何をすればいいの?」とこれからの見通しを立てたいケースです。
具体的な手順に納得したいときの兆候として、次のような疑問が生じることが挙げられます。
- よくわからない
- 何をすれば成功するの?
- 結局私は何をすればいいの?
種類③:具体的な因果関係が分かる
行動と結果の法則性について納得したいという種類の欲求があります。
「なぜその方法でうまくいくのか?」という疑問を晴らしたいようなケースです。
因果関係に納得したいときの兆候として、次のような疑問が生じることが挙げられます。
- 善し悪しを分ける基準は?
- なぜそれで成功するといえるの?
- なぜこれで失敗するといえるの?
納得するための3つの方法
納得したい欲求を活かすためには、自らで納得する術を身につけることが重要です。
ここでは、主体的に納得するための方法を3つお伝えしていきます。
方法①:他人に尋ねる
知っている人に尋ねることも、主体的に納得するための1つの方法です。
教えてもらえるのを待つのではなく、教えてくれそうな人全員に自らで尋ねるというスタンスを持ちましょう。
ただし、聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥というように、他人に尋ねることは非常に勇気がいります。
また、尋ねる人の態度によって相手の態度が影響されるので、効果的に尋ねるためにも教わる技術を身につけることも重要です。
準備中:教わる態度
方法②:モノから調べる
論文・ブログ・SNS・書籍などから調べることも、主体的に納得するための方法です。
納得したい情報を見つけるためのキーワードをピックアップして、探していくということです。
ただし、モノから調べるときは、目的のすり替わりに注意してください。
次のように目的が、「納得すること」から変わらないようにしましょう。
- 納得するために調べる→疲れたくないから調べない
- 納得するために読む→知識欲を満たすためにすべて読み切る
準備中:情報収集の種類
方法③:実践して自ら学ぶ
実践を通して得た経験を活用することも、主体的に納得するための方法です。
実践で立てた仮説を検証することで、納得するための情報が集まります。
納得しないで無理に行動するのではなく、納得するために勇気を出して行動しましょう。
ただし、行動した後はその行動で何が分かったのかを振り返らないと、納得するための思考が働かないことに注意してください。
準備中:実行力の高め方
まとめ
納得できないと先に進めないという性質は、納得したい欲求が強いという長所です。
初動が遅いかもしれませんが、この性質を活かせるようになると後伸びによる成長スピードが早まります。
ただし、納得することを他責にしてしまうとこの性質が短所に働いてしまいます。
納得したい欲求を活かすためにも、納得するために先に進むという術を身につけることを目指してみてください。