ビジネスをするうえでは、過去や未来をポジティブに捉える方が実行力が高まり有利になります。
しかし、楽観的ではなく楽天的な態度になると、むしろ致命傷を負うリスクが増えて継続が困難なビジネスになるでしょう。
この記事では、楽天的と楽観的の違いについてお伝えしていきます。
誤ったポジティブさを身につけないためにも、ここにある情報を取り入れてみてください。
楽天的と楽観的の違いとは
楽天的と楽観的な違いは、範囲と根拠にあります。
「何をなぜポジティブに捉えるのか」という点が、それぞれ異なるということです。
ここでは、もう少し詳しく楽天的と楽観的の違いや共通点について紹介していきます。
意味:楽観的と楽天的
辞書によると、楽観的と楽天的の意味は以下の通りです。
・楽天的
[形動]物事にくよくよしないでいつも明るいほうに考えていくさま。のんきなさま。「—な性格」
出典:https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%A5%BD%E5%A4%A9%E7%9A%84/
・楽観的
[形動]物事をうまくゆくものと考えて心配しないさま。「—な見通し」「—に考える」
出典:https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%A5%BD%E8%A6%B3%E7%9A%84/#jn-229577
共通点:ポジティブな捉え方
楽天的と楽観的の共通点は、ポジティブに焦点を合わせることです。
嫌なことがあっても、「嫌な部分」から焦点をずらすことで前向きな思考を促します。
どちらも対義語は「悲観的」です。
相違点:範囲と根拠
楽天的と楽観的の違いは、次の2つが挙げられます。
★楽天的↔楽観的
・範囲:全体的or局所的(すべて成功する↔〇〇は成功する)
・根拠:直感的or論理的(なんとなく成功する↔〇〇だから成功する)
楽天的は、常にポジティブな面ばかりを見ており、危機感を抱きづらい傾向のことです。
「私は大丈夫」という謎の確信を持ち、すべての出来事が万事うまくいくと信じています。
対して楽観的は、ポジティブとネガティブのすべての面を見てから、「大丈夫だろう」と予測を立てます。
事前に準備を怠らず、「大丈夫」という確信を論理的に明確に持ってからの判断です。
例.期末テスト前の思考
・楽天的:勉強してないけどまぁなんとかなるだろう、未来のことは未来の自分に任せよう
・楽観的:勉強もしたしきっとうまくいくだろう、たとえ点数が低くてもそれで終わりというわけではない
ポジティブに捉えることは同じですが、その思考を支える情報の質と量が異なります。
楽天的と楽観的な違いは、ネガティブな結果になったときに顕著に表れるでしょう。
100%ポジティブ思考が楽天的であり、20%のネガティブ思考を含む場合は楽観的です。
失敗や不安を想定したうえで、それでも「なんとかなる」と結論付けて行動できるのなら、楽観的であると言えます。
- 楽天的①:想定していない結果で動揺して、結果をなかったこととしてスルーする
- 楽天的②:想定はしていたが、対策も対処法も検討していない。未来の自分にすべてを丸投げる
- 楽観的①:失敗を想定して対策や対処法を検討していたため、小さな動揺だけで済み予定通りに行動できる
- 楽観的②:失敗する可能性を理解し、それでも挑戦する意味を見出しているため、今回の経験を次回に活かせるように最後まで全力でやり遂げる
楽観的になるための押さえどころ
ここでは、楽観的な思考をするための要点についてお伝えしていきます。
悲観的であったり楽天的であったりする場合は、ぜひとも取り入れてみてください。
要点①:大切なものを明確にする
どんな結果になることが自分にとって重要なのかを、取捨選択する必要があります。
リソースは有限であり、すべてを成功させることも、すべてを得ることもできないためです。
例.就活
・すべてを得ようとする:画家になる夢を捨てられずに就活も後ろ向き
・取捨選択する:画家になると決めてその時間を得られる職場に就く
すべてを得られないのだとしたら、どんな人生にしたいのかを検討してみてください。
大切なものに優先順位をつけられると、優先順位の低いネガティブな結果を受け入れやすくなります。
★二極化思考に注意
大切なものを明確にしたからと言って、それ以外を諦める必要はありません。
時間軸をずらしたり配分を変えたりすれば両取りできる選択肢が見つかり、新たな可能性が生まれます。
・時間軸をずらす:目標Aの次に目標Bを達成する
・配分を変える:「家族or仕事」ではなく「家族&仕事の最大化」を目指す
要点②:できることを線引きする
楽観的になる秘訣は、自分のコントロール可能範囲を明確にすることです。
結果の多くは「方法×行動×運」で決まるものであり、自分ではコントロールしきれません。
「人事を尽くして天命を待つ」ということわざがあるように、できることをしたら後は祈るだけでいいのです。
- 方法:どのようなアプローチを試みるか
- 行動:行動量×行動質
- 運:外部要因(環境、他者、タイミングなど)
ポジティブな結果を期待しすぎると、失敗を恐れて常に悲観的になります。
成果を得るために最大の努力はしますが、結果を手放し期待を下げるというバランス感覚が重要です。
例.セールスでの線引き
・コントロール可能:お客様選び、準備、セールスの質、成約率を高める施策
・コントロール不可能:お客様の反応
・悲観的:どうがんばっても成約しない、下手なセールスをしてクレームになるかも
・楽天的:方法とか準備とか関係なく私なら成約できる
・楽観的:入念に準備をしたからあとは実施するだけ
要点③:ストーリー作りを徹底する
楽観的になるには、「このまま続ければ最後には上手くいくだろう」という希望が必要になります。
その希望があることで、目先の結果に振り回されず、前向きに努力を続けられるようになるためです。
例1.プロ野球選手になりたい
・希望あり:この監督の期待に応え続けていればいずれはプロになれるだろう
・希望なし:一度でも試合に負けると僕はプロにはなれないかもしれない
例2.絵を上手に描けるようになりたい
・希望あり:私は絵と向き合い続ける人生でありたい
・希望なし:私は世界で一番絵が上手な人物になりたい
希望を持つためには、成功するまでのストーリーを作ることが有効です。
「何をしたらどうなり、その結果うまくいく」という仮説的なストーリーを作り、都度修正することで今に集中できるようになります。
例1.受験に合格したい
・ストーリーあり:夏ごろに偏差値10upして、秋は躓き、冬に10up、なんとか合格基準に間に合う
・ストーリーなし:勉強はしてるけど本当に希望校に受かる実力になるのかな…
例2.小説で賞を取りたい
・ストーリーあり:10回挑戦すれば1度くらいは賞を取れるかも
・ストーリーなし:私なら1回で賞を取れるはず。取れないならば才能がないということ
目標設定をしたら、楽観的になるためにもストーリーとなる計画を練ってみてください。
その計画通りに実行すればうまくいくと思えるなら、目先の些細な結果に一喜一憂せずに余裕ある態度を保てるようになるでしょう。
- 悲観的:何があっても失敗するという不安
- 楽天的:計画はないけど上手くいくという自信
- 楽観的:計画を実行できれば上手くいくという自信
要点④:ネガティブな結果を歓迎する
楽観的のもっとも特異な点は、ネガティブな結果も受け入れていることです。
失敗や不合格など、都合の悪い未来が訪れる可能性を理解し、その未来に対してもオープンな態度を保ちます。
例.恋人へのプロボーズ
・ネガティブな結果を拒絶する:断られるわけがない、断られたら人生が終わる
・ネガティブな結果を受け入れる:断られる可能性もある、ダメでも次がある、今回の挑戦は糧になる
楽観的とは、成功も失敗も踏まえて未来をポジティブに解釈する思考です。
真の楽観的な思考を身につけるためにも、想定される最悪の未来と向き合い、受け入れる準備を整えてみてください。
★深刻ではなく正確に捉える
ネガティブな結果を捉えるときは、深刻にではなく正確に捉えることが大切です。
客観的に結果を認識し、その後の自分の動きを決めることで、ネガティブな結果からも恩恵を受けられるようになるでしょう。
・深刻に捉える:赤点取ってしまった。もう僕の人生は底辺から抜け出せないんだ
・正確に捉える:今回のテストは赤点だった。次は平均点を捉えたいから環境づくりから始めよう
要点⑤:最高の人生を作れると信じる
楽観的である人は、次の2つのいずれかの信念を持っています。
- 自分は最高の人生が作れる
- 最期には良い人生だったと思える
目先の結果に成功や失敗があっても、最終的にはなんとかなるだろうという自信です。
「楽しいも苦しいも含めて人生であり、素晴らしい人生を作るスパイスだ」と考えて楽観的な態度を保ちます。
- 悲観的:楽しい以外は人生に不要
- 楽天的:楽しいことしか起きないはず
- 楽観的:楽しいも苦しいも含めて人生を豊かにする
「人間万事塞翁が馬」という故事があるように、どんな結果がどんな影響を及ぼすかは誰にもわかりません。
1つの結果で「不幸になる」と憂いても意味がないので、自分は幸せになれるという前提のもと、その過程をどう生きるのかを検討してみてください。
★人生は暇つぶし
「人生は暇つぶし」とは、ブレーズ・パスカルによる言葉です。
冥土に行くまでの暇つぶしであり、自分にとって最高の暇つぶしを目指すべきだという考えを指します。
人生に「〇〇をしなければならない」という使命はなく、あるのは「その暇つぶしを望んでいるのか」だけなのかもしれません。
出典:https://www.weblio.jp/content/%E4%BA%BA%E7%94%9F%E3%81%AF%E6%AD%BB%E3%81%AC%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%81%AE%E6%9A%87%E3%81%A4%E3%81%B6%E3%81%97#:~:text=%E6%A6%82%E8%A6%81,%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%A8%E8%A8%80%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82
楽天的な個人事業主のよくある失敗
ここでは、楽天的な個人事業主が陥りがちな問題ケースについてお伝えしていきます。
失敗①:経験を活かさない
楽観的な個人事業主は、経験を重要視しません。
「成功も失敗は過ぎたことであり、未来に失敗は存在しない」と捉え、体験した内容について内省しても意味がないと考えるからです。
★楽天的な人が振り返りを嫌うよくある思考
・私は悪くなかった
・振り返りがめんどくさい
・次はなんとかなるでしょ
・ネガティブになることは悪いことだ
しかし、実践だけではなく、その経験を振り返り次に活かすことこそが人を大きく成長させます。
自分責めする感覚が嫌だという人は、「次はどうしたらよさそうか」という仮説だけでも立ててみてください。
★振り返りのフレームワーク(YWT)
・Y:やったこと
・W:わかったこと
・T:次にやること
失敗②:受け身で現状維持
楽天的な個人事業主は、現状を把握することを嫌がります。
現実を直視するとポジティブ感情を支える土台が消えるため、「今」や「未来」について深く考えません。
- 今を考える:今はどんな状況で、何が満たされていて、何が不満なのか
- 未来を考える:このままだとどうなるのか、本当はどうなって欲しいのか
現状が満たされていると思い込み、変化することはリスク的な行動として捉えます。
「このままでも幸せな未来が訪れる」と認識して、わざわざ行動する必要性を感じないのです。
- 楽天的:根拠はないがよい未来が訪れるだろう
- 楽観的:よい未来が訪れる可能性とそうでない可能性を認識している
この現状維持から抜け出すには、自分の本当の望みを明確にすることが最初のステップになります。
そして、どうすればその望みを叶えられるかと検討していくことで、現状を変える動機づけが強まり、新しい行動に取り組めるようになるでしょう。
★よくある個人事業主の現状維持傾向
・自転車操業
・閉塞感から目標を立てない
・「機会があったら…」が口癖
・将来のための種まきを嫌がる
・本気を出せばいつでも挽回できると考えている
失敗③:一発逆転の挑戦をする
危機的状況に陥ると、「今を変えたい」という想いから現状を打破する方法を模索します。
楽天的な人はリスクを認識しないため、「ラクで早く成果が手に入るが、成功確率が低く賭け金が高い方法」に手を出してしまいます。
★個人事業主のギャンブル的な挑戦
・1つの自己投資に資産の大半を使う
・知識もスキルもないうちにFXや小型株で人儲けを狙う
・危機的状況に陥るまでロクに働かずに貯蓄をすり減らす
運がよかったら、その怖いもの知らずの行動力から大きな成功を得られるでしょう。
しかし、それは成功確率の低い単なる博打であり、あまりおすすめできるものではありません。
- 投機的挑戦:経験が役に立たない、運要素が強い、何度も挑戦できない
- 投資的挑戦:役立つ経験が得られる、運要素が弱い、何度も挑戦できる
現状を変えたいと感じたら、まずはその焦りの正体と向き合ってみてください。
残されたリソースを具体的にすることで、より現実的な方法を実行する余地が生まれます。
まとめ
ビジネスにおいても人生においても、悲観的よりはポジティブに考えたほうがよいでしょう。
しかし、楽天的と楽観的を間違ってしまうと、その瞬間は楽かもしれませんが破滅的な未来をもたらす可能性が高まります。
ポジティブ思考を持ちたいときは、楽観的になることを心がけてみてください。
そのためにも、次の5つの要点を検討してみることをおすすめします。
- 要点①:大切なものを明確にする
- 要点②:できることを線引きする
- 要点③:ストーリー作りを徹底する
- 要点④:ネガティブな結果を歓迎する
- 要点⑤:最高の人生を作れると信じる