自己防衛的な行動は他者からの信用を失う結果になりやすく、仕事においては特に気をつけたい反応の1つです。
自己正当化することで空気が悪くなり、他者との関係性が悪化した経験は多くの人があるのではないでしょうか。
この記事では、自己正当化と良好に付き合う方法についてお伝えしていきます。
自己正当化の欲求は誰もが持っているものなので、付き合い方を学んで振り回されないようにしましょう。
よい自己正当化と悪い自己正当化
自己正当化というとネガティブなイメージを持ちがちですが、自己正当化には「よい自己正当化」と「悪い自己正当化」があります。
自己正当化を直すときは、よい自己正当化を残しつつ、悪い自己正当化だけを改善するようにしてください。
ここでは、それぞれの自己正当化についてお伝えしていきます。
種類①:よい自己正当化
私たちの人生は、常に選択の連続です。
何が正解かは誰にも分からず、そんな中で何かしらの選択をして結果を得るための努力をしなければなりません。
そんな状態で「私は間違っているかも」という不安感を持ちつづけていると、次のように足を止める原因になります。
- 決断への迷い:いつまでも決断できない
- パフォーマンスの低下:選んだはずなのに踏ん切りがつかない
よい自己正当化は、不安を突き進む勇気を与えます。
「私は正しいはずだ」という自信を育み、自分の軸を持って不確実な世界で自分らしく振舞うことを後押しするためです。
正解のない選択をしなければならないとき、自分を信じられなければ不安に飲み込まれてしまいます。
正解のない問いに対して自分の意見を持ち、自分の意見を信じてパフォーマンスを最大化するためにも、自己正当化は重要な役割を担っているのです。
準備中:自信のつけかた
種類②:悪い自己正当化
悪い自己正当化とは、不安や恐れから自分を守るための反応です。
よい自己正当化は前進するための勇気を育みますが、悪い自己正当化は後退しないために使われます。
たとえば、次のようなケースが悪い自己正当化です。
- 自分のミスを責任転嫁する
- 自分の意見だけが正しいと思い込む
悪い自己正当化は、不安や恐怖、怒りや焦りなどのネガティブな感情から生じます。
よりよい答えを見つけるための柔軟さが失われ、自分の意見を絶対のものとして捉えているならば、それは悪い自己正当化である可能性が高いでしょう。
準備中:精神的な成長を遂げる5ステップ
自己正当化が直ったかを確認するチェック項目
自己正当化を直そうとしたとき、進捗を確認できるツールが役に立ちます。
ここでは、どれほど自己正当化が直ったかを視覚化するためのチェック項目をお伝えしていきます。
項目①:自己正当化をしたくないと実感している
自己正当化を直そうとするとき、「自己正当化をしたくない」と実感することから始める必要があります。
自己正当化は損失だけではなく恩恵が得られる一面もあり、簡単に手放そうと思える行動ではないためです。
★自己正当化することによる恩恵
・相手を論破する快感が得られる
・損失を回避するチャンスが得られる
「自己正当化を直したい、でも自己正当化を肯定したい」という感覚では、自己正当化をやめることができません。
「自己正当化で得られるメリットはたしかにある。でも私はそれを手放すんだ」という決断をすることが、自己正当化を直すための最初の1歩になります。
準備中:決断を促す方法
項目②:自己正当化の前兆に気づける
自己正当化をする前に「自己正当化しそうだ」と気づけるようになることが大切です。
自己正当化は無意識的におこなうことが多く、前兆に気づけないとブレーキをかけられないためです。
無意識レベルで自己正当化しない方法も考えられますが、自己正当化の癖は誰もが幼いころから持っており簡単ではありません。
まずは、自己正当化をしないように意識できるようになることから始めてみてください。
その経験を積み重ねることは、無意識レベルで自己正当化をしない習慣を得ることにもつながります。
項目③:自己正当化したことに気づける
自己正当化をすると、意志力を使わない限り自己正当化を続けてしまいます。
どれほど意識をしていてもいつかは自己正当化をしてしまうため、途中で止めるためにも自分の行動に気づけるようになりましょう。
自己正当化して失敗したか否かではなく、「あっ今私は自己正当化している」と気づけることがこの項目では大切です。
熱くなっている自分を冷静に俯瞰するスキルが求められるので、4つの項目の内もっとも難しいかもしれません。
項目④:自己正当化を挽回できる
自己正当化をしたあとの行動によって、信用を失うか否かが決定します。
そのままズルズルと自己正当化をするのはもちろんのこと、空気が悪くなるような態度や振る舞いもよい行動ではないでしょう。
空気を良くすることは難しいため、まずはそれ以上の損失を生まないための行動を身につけることをおすすめします。
準備中:勇気を出す方法
自己正当化の直し方9選
ここでは、自己正当化を直すための9つの方法をお伝えしていきます。
人によって向き不向きがあるため、たくさん試して自分に合った方法を見つけてみてください。
直し方①:影響を知る
自己正当化による影響を知ることで、自己正当化を改善したいという意志が強まりやすくなります。
私たちは自分の行動を肯定したがる傾向があり、意識しないとネガティブな影響から目を背けやすいためです。
自己正当化の影響を把握するときは、次の2つのことについて情報を広く集めてみてください。
- 自己正当化によるポジティブな短期的・長期的な影響
- 自己正当化によるネガティブな短期的・長期的な影響
ただし、自己正当化には「よい自己正当化」と「悪い自己正当化」があります。
自分がおこなっている自己正当化の影響を客観的に見るためにも、「自己正当化=悪」と決めつけないようにしましょう。
直し方②:仕組みを知る
自己正当化の仕組みとは、ざっくりと解説するならば次の思考プロセスです。
- 意見が生まれる:タバコを吸いつづけたい
- 認知的不協和が起きる:タバコはストレス解消になるけど健康に悪い
- 意見を肯定する根拠を探す:ストレス解消の方が人生に役立つ
- 意見を肯定する:タバコを吸う私は正しいはずだ
自己正当化は、生じた葛藤を解消するための仕組みにすぎません。
自己正当化そのものが悪ではないため、振り回されない付き合い方が重要になります。
自己正当化をしたことに気づいたら、自分の思考を検証してみてください。
「何を肯定するために思考を進めているのか」を内省によって明らかにすることで、柔軟な思考を取り戻す準備が整います。
自分の葛藤や決めつけを洗い出して疑いを持つことが、内省するときのポイントです。
準備中:振り返りの方法
直し方③:理由を把握する
自己正当化を直すには、核心的な理由を明確にすることが重要です。
核心的な理由を無視して行動を変えると、新たな問題を引き起こしてしまうためです。
自分が自己正当化をする理由を深く掘り下げてみてください。
自己正当化で期待する恩恵を言語化できると、本当に解決すべき問題がようやく明らかになります。
以下の項目について振り返ることで、自己正当化をする理由のヒントが見つかるかもしれません。
- 自己正当化しやすい議題
- 自己正当化しやすい環境
- 自己正当化をしたときの感情
直し方④:議題を分類する
すべての話し合いに勝とうとすると、自己正当化が生じやすくなります。
自分の意見がどんなに正しいかをアピールすることだけが、会話の目的になるためです。
しかし実際は、1つの正解しかない問題や、絶対に勝たなければならないケースはそう多くありません。
自己正当化しやすい議題のほとんどが、負けてもよかったり妥協案を見いだせたりします。
自己正当化を直すためにも、絶対に自分が勝たなければならないケースを明確にしてみてください。
「勝ちor負け」以外の軸ができあがることで、無暗に自己正当化をすることを防止できるようになります。
直し方⑤:口癖を身につける
私たちは最初に発する接続詞から話す内容を決めている傾向にあるため、自己正当化につながらない接続詞を習慣づけてみてください。
- 自己正当化を促しやすい接続詞:だって、でも、いや、ん~
- 自己正当化を促しづらい接続詞:たしかに、なるほど、そっか、ふーん
無意識レベルのパターンを改善することには時間がかかりますが、無意識レベルの1部分だけの改善ならそれほど難しくありません。
まずは、自分が使う頻度の高い接続詞を見つけることから始めることをおすすめします。
準備中:習慣化の方法
直し方⑥:パターンを把握する
自分の自己正当化の流れをパターンとして捉えることで、自己正当化に気づきやすくなります。
自己正当化するときの、以下のパターンを明らかにしてみてください。
- 自己正当化をするタイミング
- 自己正当化の行動と言動の内容
自己正当化をパターン化するには、日記のように自分で記録して分析する方法もありますが、他者からフィードバックをもらうことをおすすめします。
自分の過去の言動は認知バイアスの影響を受けやすく、正確に思い出すことが困難なためです。
冷静にフィードバックを受け取るためにも、以下のような質問リストを作っておくとよいでしょう。
- どういうときに自己正当化をしているか?
- どういう流れで自己正当化をしているか?
- どんな言葉や行動が自己正当化のきっかけになっているか?
- 自己正当化をしているときはどんな態度や振る舞いになっているか?
準備中:アドバイスを受け取れない人の心理とは
直し方⑦:行動を設定しておく
自己正当化をしたあとの行動をパターン化しておきましょう。
アドリブではなく決められたパターンを実行しようとする方が、自己正当化を中断しやすいためです。
例.自己正当化を中断しやすい行動パターン
・熱くなったことについて謝る
・肯定できそうな相手の意見を探す
・自分の意見の特例について検討する
・ちょっと頭冷やしてくると席を離れる
状況によって適切な行動は変わるものです。
複数のパターンを引き出しとして持っておき、臨機応変に使い分けられるようになることをおすすめします。
準備中:成功体験の作り方
直し方⑧:内容と行動を振り返る
自己正当化を直すには、仮説構築と実行と修正を粘り強く繰り返さなければなりません。
自己正当化をしないというのは技術であり、一朝一夕に身に付くものではないからです。
自己正当化の内容を振り返るときは、以下のことを検討してみてください。
- どのような仮説を検証したのか
- どのようなマインドで検証したのか
- 何が成功したのか
- 何を失敗したのか
- 次は何を試したらよさそうか
失敗経験によって自己効力感が低下してしまい、多くの人は1度の挑戦で諦めてしまいます。
もしも自己正当化に対する実験を繰り返すことが苦しいと感じたら、コーチングを受講して目標達成の過程を支援してもらうのがおすすめです。
準備中:目標達成にコーチングが有効な5つの理由
直し方⑨:非があると認めることに慣れる
どれほど頭で納得していても、自分にも責任があることを認めるときは抵抗感が生じます。
プライドの高さによるものと言われがちですが、この原因の多くはプライドではなく慣れていないだけです。
その役割におけるその行動の経験が乏しいため、「非があると認めると悪いことが起きるのではないか」と不安になり抵抗感が生じるのです。
行動と解釈における成功体験を積むことで、抵抗感が小さくなり自己正当化が生じなくなります。
- 行動への慣れ:上司に誤りを認めること、息子に謝ること、夫に自分にも責任があると認めること
- 解釈への慣れ:素直に謝れる人こそが格好いいのだ、自分に責任がないなんてあり得ない
どんな問題も、1%程度は自分の責任があるはずです。
何か問題が起きたら、「自分も悪かった」と認める練習をおこなってみてください。
自己正当化の仕組み
自己正当化とは、端的に言えば「後付けの合理化」です。
正しさを追求するのではなく、「自分が正しいと信じたい意見」をまず最初に確定させます。
そして、「意見の正しさを肯定する根拠」を見つけ出し、「だから私は正しいのだ」という結論にたどり着くのが自己正当化です。
結論ありきの思考であり、当人がいくら考え直してもその思考から逃れることは難しいでしょう。
生存することはもっとも重要なタスクであり、自己正当化による自己防衛は生存戦略の1つだからです。
この仕組みから考えるなら、自己正当化をしないためには「自己防衛の必要性のなさ」を理解することに取り組むべきかもしれません。
「本当は勝たなくても問題ないのだ」と心から納得できることで、自己防衛をする必要性を失い、無暗な自己正当化がなくなるはずです。
他者から行われるよくあるアプローチは、根拠に対する指摘です。
しかし、どれほどその指摘が的を得ていても、本人はそれを認めてしまうと命にかかわるのですから当然受け入れられません。
自己正当化を直すとき、正しさの追及ではなく、安全性の追求こそが最も重要な取り組みなのです。
自己正当化と向き合うときは、この仕組みを理解してから自分の行動・思考・感情を振り返ることで新しい気づきが生まれ、その結果として思考と行動を変えてみてください。
よくある自己に正当化の流れ
自己正当化の思考の流れはさまざまありますが、ここでは1つのパターンである「値引き」ついてお伝えしていきます。
値引きとは、自分が持っている信念を脅かす事実を小さく見積ることです。
一般的に、値引きは次の4つの流れを踏みます。
- 問題自体の値引き:タバコは害ではない
- 問題の重大さの値引き:タバコは害だが健康な人もいる
- 問題の解決可能性の値引き:自分にはその治療法が合わない
- 変容能力の値引き:自分にはタバコをやめる才能がない
どのステージから始まるのか、どのステージで納得できるかは人によって異なります。
強い脅威を感じるほど、値引きに執着してステージが上がっていきます。
値引きを解消するには、値引きしていることを自覚することが最初の1歩です。
値引きしていることに気づいたら、自分の意見と根拠を洗い出して、それぞれがどれほど妥当なのかを検証してみるとよいでしょう。
自己正当化をする理由7選
ここでは、自己正当化をしてしまいやすい理由についてお伝えします。
理由①:攻撃への反応
否定されたり、バカにされたりしたら、誰でも無意識的に反論してしまいます。
自己正当化は、攻撃への反作用として反射的に生じやすいためです。
無意識的な自己防衛の機能の一種であり、この理由による自己正当化はそう簡単に止められません。
そのため、攻撃されたと捉えないことが、攻撃への反応による自己正当化には有効になります。
- 関係性を築く:この人は私を否定するはずがない
- 攻撃性を検討する:その言葉を攻撃だと捉えた根拠は何か
- 前に進むヒントだと捉える:起業して成功するために直すべき課題の候補を知れた
理由②:自尊心の防衛
「このままでは相手に低評価されて自尊心が低下する」と恐れたとき、自尊心を防衛するために自己正当化をおこないます。
自尊心の低下とは、たとえば次のような不安のことです。
- 無知だと思われる
- 才能がないと思われる
- 間違いを起こす人だと思われる
自己受容が低い人は、自分の才能や成果を自己肯定の材料にしている傾向があり、自尊心の防衛を過度におこないがちです。
自尊心の維持を目的に自己正当化をしてしまう場合は、理想の自分像を明確にするとともに、素の自分に対する不安感を言語化してみることをおすすめします。
例.自尊心を防衛するための自己正当化
・相手の間違いばかりを指摘する
・自分の間違いだと分かっていてもそれを認めない
・「理由があるからしかたないんだ」と背景を伝える
準備中:自己受容の方法
理由③:視野の狭まり
私たちはだまし絵を見たときと同じように、一度定まった思考を維持しようとします。
この傾向によって、自分が肯定したい意見を決めたら、それ以外の意見をつっぱねるために自己正当化することがあります。
「私の出した答え以外は間違っているはずだ」と視野が狭まり、自分の意見を肯定する情報ばかりに焦点が当たるようになるということです。
視野の狭まりによる自己正当化では、次のような言葉を繰り出します。
- でも
- 絶対に
- ふつうは
- 一般的には
視野が狭まった状態では、それ以外の思考をすることも、他の意見を受け取ることもできません。
自分が視野が狭まり熱くなっていると感じたら、一旦冷静になる時間を設けるようにしてみてください。
「自分の意見はどの角度から見ても100%正しいのか」を検討することも、視野を広げるきっかけになるのでおすすめです。
また、自分の意見を先に出すのではなく、相手の意見を聞いてから自分の意見を決めるという流れも有効です。
理由④:他者への嫌悪感
相手を嫌っている場合、その相手を否定することを先に決めてしまいます。
「嫌いな相手が言うことは間違っている」と思考ロックして、相手の主張を否定しようと決めているようなケースです。
相手が生理的に嫌い、相手に負けたくないなど、嫌いにもさまざまな種類があります。
そのため、夫婦間や友人間などの親密な間柄でも、他者への嫌悪感による自己正当化をすることに注意が必要です。
他者への嫌悪感を持っているときは、次のような二極化思考になっています。
- 相手は悪者
- 自分は正義
「正義なのだから正しく、悪なのだから間違っている」という信念によって、根拠がズタボロでも自分が正しいと認識してしまいやすいです。
負けたくない特定の相手と話し合いをするときは、冷静であり続けるための工夫が重要になります。
第三者を交えて話し合ったり、文面でやりとりしたりなど、感情が動きづらい方法を模索してみてください。
また、本質的な解決を目指すのであれば、関係性を向上させることをおすすめします。
準備中:他責思考の直し方
理由⑤:自分への過大評価
自分への過大評価とは、「私は相手よりそのことについて詳しいんだ」という感覚のことです。
「自分は熟知しており、正しい答えを知っている」という思い込みから、自分の意見を絶対のものと疑わなくなります。
自分の意見の正しさを信じ込んでいるため、自分の意見を肯定するための材料だけしか目に映りません。
他人に指摘されたとしても、相手を見下しており「これだから分かってない人は」と意見をつっぱねます。
自分への過大評価による自己正当化の厄介なところは、未熟であるほど「自分は優れている」と錯覚してしまいがちであることです。
ダニング=クルーガー効果とも言われており、スキル練度が低いうちは自分の能力を過大評価する傾向があるという認知バイアスです。
「自分は正しくて相手は間違っている」と過信していることに気づいたら、信用できる第三者の意見を仰ぐことをおすすめします。
また、自分の能力を正しく把握するために、360度フィードバックのような客観的な情報を集めることもおこなってみてください。
準備中:360度フィードバックとは
理由⑥:大きな損失の予期
自分の責任を認めることで大きな損失が生じるとき、自己正当化への執着が強まります。
次のような、「自分の責任になることは命の危険だ」と解釈しているようなケースです。
- 責任を認めると出世できなくなる
- 責任を認めると離婚する羽目になる
- 責任を認めると自分が加害者になる
- 責任を認めると長く苦しい説教が始まる
大きな損失に怯えて自己正当化をしてしまうときは、その損失の再評価をする必要があります。
具体的には、次の4つのことについて検討と検証をしてみてください。
- 責任を認めうことで失うもの
- 責任を認めることで得られるもの
- 自己正当化をすることで失うもの
- 自己正当化をすることで得られるもの
理由⑦:サンクコストへの執着
「これ以上失敗するわけにはいかない」という危機感は、自己正当化傾向を強めます。
間違いを認めること自体が損失になるため、死に物狂いで自分を正当化しようとするためです。
例.サンクコストへの執着
・費やした労力への執着
・費やした費用への執着
・費やした時間への執着
サンクコストへの執着が強い人は、「失敗=無駄」と捉えている傾向があります。
非合理的な自己正当化をしないためにも、次の3つのことについて納得しておくとよいでしょう。
- 失敗するほど学びが深まる
- 一度の挑戦で成功するわけがない
- 致命傷的な失敗はそれほど多くない
準備中:失敗の乗り越え方
自己正当化と向き合うときの注意点
自己正当化を直すということは、自分に疑いを持てるようになるということです。
一歩間違えると自信を失って挑戦意欲がなくなるため、慎重に自己正当化と向き合わなければなりません。
ここでは、自己正当化と向き合うときの注意点についてお伝えしていきます。
自己正当化を直すときは、ここにある注意点を意識しながら取り組んでみてください。
注意点①:元気であろう
自己正当化と向き合うときは、元気である必要があります。
ストレスフルや寝不足など、元気がない状態では悲観的で視野が狭い状態になるためです。
自己正当化を直すには、自分の深いところにある痛みと向き合わなければなりません。
そんなときに元気がないと、自分を卑下したり他の人が悪いのだと他責にしたりして、歪んだ思考をしてしまいます。
自己正当化を直すどころか、むしろ極端な思考によってより問題が複雑化してしまう原因になるため、元気な状態であるときだけ向き合うようにしてください。
準備中:元気になる方法
注意点②:改善を楽しもう
自己正当化を直さなければと焦るほど、失敗する可能性が高まります。
短期的に解決しようと極端な方法を試したり、確実に成功すると思えない限り動けなくなったりするためです。
しかし、自己正当化を直すには、粘り強く自分と向き合うことが欠かせません。
焦って短期的に成功しようとするほど、自分を追い詰めてネガティブ思考を促します。
自己正当化と向き合うときは、改善することを楽しんでみてください。
「試行錯誤によっていろんな自分の一面と出会うこと」を楽しめるようになれば、その試みは改善だけではなく自己肯定感を上げることにもつながるでしょう。
準備中:焦りの解消方法
注意点③:自己否定はしない
自己正当化を直すとき、自己否定はしないようにしてください。
自己正当化は自分の弱さを隠す手段でもあり、セルフイメージが低下するほどむしろ自己正当化を手放せなくなるためです。
そもそも、自己正当化は自分よりも外的要因のほうが、原因の比率が大きいです。
遺伝、経験、育成環境、他者との関係性など、自分では選べなかった外的要因によって自己正当化の癖が身に付いてしまったといえます。
そのため、自分が悪い・劣っているから自己正当化をしてしまうというのは間違いです。
自己正当化と向き合うときは、自己否定しないためにも次の2つのことを忘れないようにしてください。
- 自己正当化をしてしまうのは自分の責任ではない
- 自己正当化を今後もおこないつづけるかは自分の責任である
準備中:否定的な目標は悪いのか
注意点④:自分を理解して許そう
内省を促して自己正当化の核心に迫っても、その核心を拒絶してしまうことがあります。
自己正当化を生み出している核心は、たいていが弱い自分や醜い自分による本音だからです。
しかし、そんな自分を拒絶してしまうと、自己正当化の行動を直しても今度は異なる問題を引き起こします。
常に自分の悪口を言ったり、他者との交流を避けるようになったり、かえって自分の状況は悪化するでしょう。
自己正当化を直すときは、まずは弱く醜い自分に気づき、そしてそんな自分を受け入れることが重要です。
同情するのではなく、そんな自分もいるのだとしっかりと認識して受容することで、ようやく自己正当化を根本的に改善できる状態が整います。
準備中:自責思考をやめるには
注意点⑤:被害者になろうとしない
「どうせ私が悪いんでしょ!」と被害者のように開き直る態度を取るケースがあります。
一見すると自責思考にみえますが、実際は「相手の責任だけど私の責任にしておく」という他責思考です。
心を閉ざしてこれ以上話し合わないようにするための手段でしかなく、自己正当化が直っているわけではありません。
一旦話を断ち切ることには有効かもしれませんが、「自己正当化を直す=自分の罪を認めるポーズをとる」ということではありません。
「相手は分かってくれない」と決めつけるのではなく、分かってもらうための努力をまずはおこなってみてください。
また、「私or相手が悪い」という二極化思考は被害者意識を促すため、「自分の責任とは何か」を部分的に考えてみることをおすすめします。
準備中:二極化思考の改善方法
他者の自己正当化との付き合い方
ここでは、自己正当化をおこなう他者との付き合い方についてお伝えしていきます。
自己正当化を強める対応をしてしまうときは、ここにある方法を取り入れてみてください。
付き合い方①:受け取って流す
もっとも基本的でライトな付き合い方は、相手の意見を受け取って流すことです。
相手が自己正当化をしたら、「ふーん、そうなんだね」「あなたはそう考えたんだね」と受け取るだけで批判はしません。
相手を正そうとすると揉めてしまいやすいため、力を注ぐ必要がないならば掘り下げないことが無難になるでしょう。
ここで重要なことは、相手の意見を受け取っても肯定をしないことです。
意見を評価しようとするとお互いにヒートアップするので、相手の意見を承認する程度に留めることをおすすめします。
付き合い方②:一部だけ肯定する
もう一歩踏み込むならば、共感や肯定できる部分を伝えるという方法が挙げられます。
「わかってもらえた」という肯定感を与えられるため、相手はそれ以上自己正当化をしようとすることはないでしょう。
ただし、何を肯定するかで「わかってくれない」という感覚を強めて、より自己正当化が助長することがあります。
共感や肯定は比較的高度なスキルであるため、この方法を用いるときは慎重になってください。
付き合い方③:要約して内省を促す
相手の自己正当化と腰を据えて向き合うときは、相手の意見や根拠を要約して内省を促す支援が有効です。
相手の思考の中身を要約することで、相手は客観的に自分の思考を捉えられるようになります。
頭のなかで考えるよりも論理的思考をしやすくなり、自己正当化傾向を弱められる可能性が高まります。
ただし、相手の自己正当化と向き合うときにもっとも重要なことは、心理的安全性を作ることです。
「この人になら自分の弱さを晒しだせる」という感覚を抱かせない限り、相手は本音を言語化できずに自分を正当化することにしか意識が向きません。
その状態による要約や内省の支援は心理的レイプにつながりやすいため、まずは徹底して心理的安全性を作ることから始めてください。
個人事業主が自己正当化しがちな3つのケース
ここでは、個人事業主が自己正当化して後悔しやすいケースについてお伝えしていきます。
ケース①:計画への自己正当化
「私の計画は正しいはずだ」という自信を持つことは、事業をおこなう上では大切です。
ある程度の自信がないと、行動することが難しくなりいつまでも計画をこねくり回すことにつながります。
しかし、計画を実行してフィードバックを得たら、その情報をもとに計画を修正しなければなりません。
手に入れたその情報を反映したほうが、よりよい計画になる可能性が高いためです。
にもかかわらず、「私の計画は正しいはずだ」と自分の計画を自己正当化して、修正することを頑なに拒むケースがあります。
効果がないと分かっているのに、破綻するまでその計画にしがみつこうとするのです。
このような自己正当化をしないためにも、自分の計画に自信を持ちながらも、この計画は完璧ではないと疑いを持ち続けるようにしましょう。
具体的には、立てた計画による目標達成確率を数値化しておくことをおすすめします。
準備中:計画の立て方
ケース②:現状維持への自己正当化
「やりたいことがないからこのままでいい」というように、現状維持を正当化しようとするケースがあります。
「タイミングが来たらがんばろう」と、いつまでも同じ作業を繰り返しているような状況です。
現状維持をすることは悪いことではないですが、目指している現状維持が不明瞭であれば問題かもしれません。
それは現状維持を望んでいるのではなく、単に「疲れたくない」「無駄に失敗したくない」という恒常性や感情的問題で動きが止まっている可能性が高いからです。
そのような現状維持を正当化しつづけていると、本当に何もせずに時間ばかりが経過します。
求めている機会は自発的に獲得するものであり、待っているだけでは何も変わらない日々が過ぎていくだけです。
現状維持を正当化していると気づいたら、自分が期待している未来について検討してみてください。
「現在はどこに向かっている途中なのか」を明らかにすることで、現状維持の必要性を確かめられます。
準備中:現状維持は悪いのか
ケース③:サボることへの自己正当化
個人事業主における最大の宿敵は、仕事をサボってしまうことです。
他者に強制される環境ではない個人事業主は、次のような理由によってサボることを簡単に正当化してしまいます。
- 疲れたから休もう
- 機能がんばったから休もう
- その作業が苦手だから手を抜こう
- モチベーションが上がらないから締切をずらそう
休むと決めたなら、その休みを存分に味わうために自己正当化するのはよいアイデアでしょう。
「でも仕事しなければ」と悩み続けていると、せっかくの休みもモヤモヤしてしまい心身ともにエネルギーがたまらないためです。
しかし、予定外の休みを正当化するようになると、本当に仕事への意欲が生じなくなります。
私たちはよりラクな選択をすることに意欲が高まりやすく、サボる選択肢が常にある状態では仕事をする選択が難しくなります。
一度でもサボり癖がついてしまったら、そう簡単にはその癖を解消することはできません。
サボらないことが一番よい方法ですが、サボり癖がついてしまったらサボれない環境を整えることをおすすめします。
準備中:先延ばし癖
まとめ
自己正当化を直すには、行動そのものを改善するのではなく、自己正当化を生じさせている原因と向き合ってみてください。
感情が強く揺さぶられるような原因を見つけて解消できたとき、ようやく自己正当化をやめられます。
ただし、その原因を見つけて解消することには多くの時間と労力が必要です。
まずは自己正当化した自分に気づけるようになり、それ以上傷を悪化させない術を身につけることをおすすめします。