コーチングとは相談者の可能性を最大化して、刺激的な人生を歩むことを支援をする技術です。
自己理解や困難な目標達成などに効果的であり、自分が理想とする人生をつくるための行動や内省を後押しします。
延長線上の未来に恐怖や退屈感を感じる人にとっては、役立ちやすい自己投資先でしょう。
この記事では、コーチングについて詳しくお伝えしていきます。
自己成長や目標達成のためにコーチングを受けようか悩んでいたり、コーチングを学ぼうか迷っていたりする人はぜひ一読してみてください。
コーチングとは?
ここでは、コーチングの意味、歴史、流れについてお伝えしていきます。
1.コーチングの意味
コーチングの由来は「馬車」です。
「現在の場所から、望む場所まで送り届ける」という馬車のような支援をおこないます。
ただし、実際の馬車とは異なり、目的地まで自動的に送り届けてくれるようなサービスではありません。
あくまでも「現在の場所」から「望む場所」までの過程を支援するための技術です。
たとえば、受験に合格したい人をコーチングするのであれば、コーチはその人に勉強や勉強方法を教えません。
コーチングの役割は、試験に合格するためのプロセスを全力で駆け抜けることを支援することだからです。
やる気、モチベーション、不安や恐怖、完璧主義など、目標達成までのプロセスにはさまざまな障害が立ちはだかります。
それらの障害を1つひとつ自主的に乗り越えることを促す技術がコーチングです。
2.コーチングの歴史
1840年、オックスフォード大学の受験指導をする個人教師の呼称がコーチでした。
その後1880年、ボート競技の指導者に「コーチ」という言葉が使われて以来、スポーツ業界に広まります。
しかし、このときのコーチの役割は自分の経験を教えることであり、現在のコーチングとは異なっていました。
現在のコーチングのきっかけとなったのは、1974年に出版された「インナーゲーム」という書籍です。
インナーゲームでは「答えを教える」という支援ではなく、「答えを引き出す」ことで自身の潜在能力を最大化する支援を提唱しました。
この支援方法に選手たちが殺到して、指示・命令型の支援だけではなく、対話型の支援が注目されはじめたのです。
ところが、そこからスピリチュアル系のようなさまざまなコーチングの流派が生まれ、水晶玉を扱った占いのようなコーチングなんかも続出しました。
これによってコーチングの信用ががた落ちとなり、それに危機感を覚えたトマス・レナード氏が国際コーチング連盟(ICF)を立ち上げて現在の礎となるコーチングの形を作りあげます。
それからスポーツ業界に対話型の支援が広まり、現在ではビジネス業界でも同様に広まっていきます。
日本でも2022年に株式会社コーチ・エィが上場するなど、着々とその知名度は浸透しているのです。
出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jadcs/3/0/3_61/_pdf/-char/ja
3.一般的なコーチングの支援方法
コーチングの支援では、傾聴、質問、承認、フィードバックを軸にした対話がおこなわれます。
相談者の課題や目標によって対話の中身は異なりますが、一般的な流れは次の通りです。
- 目標設定(goal):あなたは何を成し遂げたいですか?
- 現状の確認(reality):何が起こっているのですか?
- 選択肢の創出(option):どんな選択肢があると思いますか?
- 前進への同意(way forward、will):いつまでに何をするかを要約してもらえますか?
これはGROWモデルと言われるコーチングの基本形の1つです。
相談者が持っている理想や現状を明確にして、その道筋をロードマップ化して新しい行動の実践を促します。
あくまでコーチング内の大きな流れであり、すべてのコーチングセッションがこのように進むとは限りません。
しかし、ほぼすべてのコーチングセッションがこの4つの内容を押さえた内容になっています。
準備中:コーチング受講の流れ
コーチングは他の支援方法と何が違う?
コーチングの他にも個人を支援する方法は存在します。
ここでは、3つの支援方法とコーチングを比較していきます。
比較①:コーチングとコーチ
先ほどお伝えしたように、スポーツにおけるコーチとコーチングはもともと同じ語源です。
同じように「現在の場所から、望む場所まで送り届ける」ことを目的としています。
異なる点は、その支援方法です。
- コーチ:指示・命令型の支援であり、成功のための理論を伝える
- コーチング:対話型の支援であり、潜在能力や可能性を最大化するための答えをその人の中から引き出す
どちらにも善し悪しがあり、相談者の状況や気質によって役立ちやすい支援方法は異なります。
可能であるならば両者に依頼することで、多くの悩みに振り回されることなく掲げている目標に集中できるようになるでしょう。
比較②:コーチングとコンサルティング
コーチングとコンサルティングの主な違いは、支援対象についてです。
- コンサルティング:課題を解決するための方法
- コーチング:課題を解決するまでの過程
たとえば「売上を20%上げる」という目標があるとします。
コンサルティングでは、「〇〇をすれば売上が20%上がる」という方法の提示による支援をおこないます。
コーチングでは、「売上を20%上げるための過程」を支援して、一定期間その目標を達成するための行動を促し続けます。
一見するとコンサルティングのほうが早く成果が出そうと感じるかもしれません。
しかし、どれほど素晴らしい方法論があってもその実施が難しかったり、そもそも本当の望みは異なったりするものです。
コーチングとコンサルティングのどちらに自己投資しようか迷ったときは、自分の課題が次のうちどちらなのかを検討してみてください。
- 必要なのは方法論的な情報なのか?→コンサル
- 必要なのはプロセスをやり遂げるための支援なのか→コーチング
準備中:コンサルとコーチの違い
比較③:コーチングとカウンセリング
現在確立されているコーチングは、主にカウンセリング手法を取り入れています。
コーチングとカウンセリングで扱うスキルは似通っており、違いはそれぞれの支援目的です。
- カウンセリング:心の状態がマイナスの人を支援する、回復
- コーチング:心の状態がマイナスの人は支援しない、前進
コーチングでは心のケアを目的としたセッションはおこなえません。
あくまでも目標達成のような目的に付随した心のケアのみであり、それは恐怖や不安といった感情と向き合う支援にとどまります。
対してカウンセリングでは、心のケアを目的とした支援をおこないます。
目標達成のような支援もおこなえますが、ほとんどが精神疾患や発達障害などの日常に支障があるケースへの支援です。
特定の目標を達成しようとする人のノウハウよりも、特定の治療をしようとする人のノウハウが蓄積されている傾向があります。
コーチングとカウンセリングのどちらを受けるか迷ったら、まずはカウンセリングを受けてみてください。
「カウンセリング領域でない」または「カウンセリング領域であってもコーチングも受けてよい」と診断された場合はコーチングを依頼しましょう。
コーチングはどういう課題に対して効果的なの?
どういう悩みをもっているときにコーチングを受けるとよいのでしょうか。
ここでは、コーチングが効果的だとされる悩みや課題をお伝えしていきます。
課題①:目標達成の支援
コーチングは、自分1人では困難な目標達成の支援を得意としています。
コーチング技術は、本当に望んでいる行動を妨げている感情的な問題を取り除くことに長けているためです。
ダイエットをするとき、「何をすれば痩せられるか」という論理が分かっていても、「めんどくさい・恐怖・不安」などの感情によってその論理を実行することは難しいでしょう。
コーチングでは、その行動を妨げている感情と向き合い、内省と検証によって1つひとつ乗り越えていくことを支援します。
困難な目標を達成するためには、「論理」と「感情」の両方の障害を乗り越えることが求められます。
感情の障害が目標達成に深く関わっている場合は、コーチングを受講してみてください。
準備中:目標達成にコーチングが有効な5つの理由
課題②:自己発見の支援
コーチングは自己発見の支援もおこないます。
次のような自分と向き合う対話がセッションの大半を占めるためです。
- 私の人生の意味とは何か
- 今までの成功パターンとは何か
- 今までの失敗パターンとは何か
- 私は何を本当にやりたいと考えているのか
- やりたいことの中にある私の価値とは何か
- 私は何を望み、何が原因で、現状はどうなっているのか
人にはそれぞれ個性があります。
自分の個性を把握して活かせるようになることは、目標達成に役立つだけではなく日々の充実感をも芽生えさせます。
「なにかが違う気がする」というような違和感を抱いているならば、コーチングを受けて自分と向き合ってみるとよいかもしれません。
準備中:理想の人生
課題③:自己成長の支援
コーチングは「スキルの練度を高めること」ではなく「精神的な成長を促すこと」に役立ちます。
精神的な成長とは、自分の行動や思考のパターンを、求めている成果が得やすい合理的なものに変容することです。
たとえば、学校では周りに合わせていたほうが友人関係を良好に保てていたとしても、職場では「意見を持たない人」というレッテルを貼られてしまうことがあるでしょう。
職場での出世を望んでいる場合は、「周りの意見も拾いながら自己主張をする」という行動の変化が精神的な成長といえます。
精神的な成長を促すには、望んだ行動をすることへの抵抗感を取り除くことが必要です。
抵抗感の正体は価値観・マインド・信念・観念などとの不一致であり、これらとの折り合いを付けることで望んだ行動を無理せずにおこなえるようになります。
コーチングでは抵抗感の正体を見つけだし、その抵抗感を検証して変容するための支援をおこないます。
精神的な成長には広い視野による深い内省が重要になるので、自分1人では行動や思考を変えられない場合はコーチングを受けてみてください。
準備中:精神的な成長を遂げる5ステップ
コーチングはなぜ効果的なの?
コーチングは一見すると対話するだけです。
教えてくれないですし、ただ質問されてそれに答えることがコーチングセッションの多くを占めます。
そんな問答だけの対応なのに、なぜ効果があるのでしょうか。
ここでは、コーチングが効果的な理由をお伝えしていきます。
理由①:その人の中にある答えを探すから
コーチングでは相談者の中にある答えを探します。
相談者の中にある答えとは、ノウハウや方法論のような一般的な答えではありません。
相談者にとっての答えであり、他の人にとっては答えではないかもしれないものです。
たとえば次のようなものが挙げられます。
- その人にとっての理想的な未来:自分はどんな未来を望んでいるのか
- その人の行動に伴う解釈や信念:なぜ今の行動や思考や感情が生じているのか
自分の中にある答えに気づけていない状態では、周りの価値観で行動を決めたり、現在のパターンから抜け出せなくなったりします。
人生の方向性を自分で決められなくなり、延長線上の人生を歩むことへの虚無感を感じるようになるでしょう。
自分で人生や行動をコントロールするためには、自分の内側に目を向ける必要があります。
困難な問題が立ち塞がったら、その問題を解決しようと焦るのではなく、自分の内側と向き合って問題を再検討してみてください。
準備中:理想の描き方
理由②:計画の実行を支援するから
ダイエットしよう!筋トレしよう!起業しよう!転職しよう!
そうした「今を変えるための目標」を設定したことがある人は多いでしょう。
しかし、そのほとんどは道半ばで途絶えているのではないでしょうか。
どれほど優れた計画やノウハウを知ったとしても、かならずしも実行できるわけではありません。
技術の難易度だけではなく、心理的なハードルやモチベーション低下などによって実行そのものが阻害されてしまうためです。
計画通りに動けるほど私たちは勤勉ではなく、ましてやリスクや疲労といった損失が伴う行動を好意的におこなえるほど勇敢ではないのです。
そんな私たちが「今を変えるための目標」に関する計画を遂行するためには、次の2つのことが欠かせません。
- アクセルとなる理想や目的を見つめなおして、前進力や継続力を上げる
- ノウハウを知ると同時に、ブレーキとなる悩みや課題を細分化して思考を整理する
コーチングでは対話を通して、その人のブレーキやアクセルを明らかにして調整します。
1人では遂行が難しい目標計画を持っているならば、コーチングを利用して実行を支援してもらうのもよいかもしれません。
準備中:実行力を高める方法
理由③:計画の修正を支援するから
理想的な未来を見つけても、そのための計画を実行しても成果がなかなか得られないことがあります。
この原因は主に計画そのもののミスによるものです。
成果を早く出すためには、実行して得られた情報をもとに計画を修正しなければなりません。
しかし、計画が誤っているかもしれないとわかっていても、次のような思考によって計画の修正に抵抗感が生じます。
- このままでもいつか成果が出るだろう
- いままでがんばってきたことが無駄になる
- 計画を変えるために調べ直すのが面倒くさい
ビジネスコーチングでは、成果と行動が釣り合っているのかを確認する機会を定期的に設けます。
「どこから来て、どこに向かっている途中なのか、このままだとどこにたどり着きそうなのか」を明確にするといった具合です。
このような振り返りを定期的に設けることで計画の再点検をすることができ、成果までの過程を修正していきます。
最初から完璧な計画を立てることはほとんど不可能なので、こうしたコーチングによる支援が目標達成確立を高めるのです。
準備中:計画の立て方
コーチングが有効に働かない5つのケース
コーチングは目標達成の過程を支援する技術ですが、すべてのケースに役立つわけではありません。
ここでは、コーチングが有効に働きづらいケースについてお伝えしていきます。
ケース①:価値の低い目標設定
コーチングは相談者が理想的な未来にたどり着くための支援をおこないます。
具体的には、その理想に近づくための目標を設定して、その目標の達成を促すことで理想的な未来を叶えようとサポートするのです。
そのため、コーチングの恩恵を受けるには次の2つの条件を満たす必要があります。
- 相談者にとって強く惹かれる理想的な未来であること
- その未来を実現するための目標が設定されていること
それほど惹かれない理想的な未来であったり、その未来と強く関係しない目標であったりした場合は、コーチングの効果は実感できません。
コーチングを受けても、「コーチと対話をして、なんかすっきりして、またモヤモヤした日常を過ごす」というサイクルから抜け出すことができないでしょう。
コーチングを受けようか迷っているときは、次の2つのことについて検討してみてください。
- 本当にその理想的な未来を叶えたいと思っているのか
- 今から目指す目標は「重要で、緊急で、できるだろう」と思えているのか
準備中:目標の見つけ方
ケース②:自己開示できない関係性
相談者が自己開示できない場合、コーチングの効果を実感できません。
本音を話さなかったり、核心的な話題から目を背けたりすると、内面にアプローチできずに単なる雑談になってしまうからです。
そのため、コーチングでは相談者が自己開示できる関係性を育むことを優先します。
コーチングの本当の効果が実感できるのは、この関係性が作られた後なのです。
しかし、コーチも人であり、誰とでも関係性を良好に築けるわけではありません。
3ヵ月以上の契約をしたのにコーチへの抵抗感があるという場合は、コーチとの相性が合わないかもしれないので、別のコーチを探すことをおすすめします。
準備中:自分に合ったコーチの選び方
ケース③:お客様思考
コーチが自分の状態をなんとかしてくれるという他責思考を持っていると、コーチングは機能しなくなります。
コーチは情報やアドバイスを提供する存在ではなく、相談者が持ち込んだ課題について話し合う存在だからです。
相談者がコーチングを有効に活用するには、次の3つのことが必要になります。
- セッション前の準備:何のテーマについて話すか
- セッション内での内省:自分で自分の答えを見つける態度
- セッション後の検証作業:セッションで得た気づきを日常で試す
上記の3つは相談者の役割であり、コーチは肩代わりできません。
コーチングを最大限に活かすためにも、コーチと相談者の役割を明確にして、何をすべきなのかを話し合うようにしてください。
準備中:他責思考の直し方
ケース④:簡単すぎる目標達成を目指すとき
目標が簡単すぎる場合は、コーチングはあまり向いていないでしょう。
コーチングは目標達成のプロセスを支援しますが、そもそもそのプロセスが相談者にとって容易であれば1人でも解決できるためです。
たとえば、自身のホームページを作りたいけれどその技術がないとき、外注するのであればコーチは不要な可能性が高いかもしれません。
外注における一連のプロセスの実施に不安があればコーチングは有効ですが、素人でも外注できる仕組みが整っていることが多いからです。
コーチングを活用するときは、その目標達成のプロセスが自分にとって難しいのかを確かめてみてください。
自分1人や仲間との協力で乗り越えられる場合は、コーチングが不向きな目標だといえるでしょう。
ケース⑤:カウンセリング領域である
先ほどもお伝えしたように、コーチングではカウンセリング領域を扱えません。
カウンセリング領域の課題を抱えているときは、目標達成を目指すことによる強い負荷によってむしろ悪影響を及ぼす可能性があるためです。
精神疾患や発達障害に苦しんでいる場合は、最優先で精神科や心療内科に相談してください。
ただし、「自分に適したお医者さんを見つける」という目標に関してなら、支援できる可能性があります。
コーチング契約中にカウンセリング領域内の問題が見つかったならば、コーチング目標を「自分に適したお医者さんを見つける」に変えるのも1つの手です。
コーチングの種類
コーチングの内にも、さまざまな種類のコーチングが含まれています。
ここでは、代表的なコーチングの種類についてお伝えしていきます。
種類①:ライフコーチング
ライフコーチングは、理想的な人生を築くためのプロセスの支援を目的にしています。
理想的な人生とは、ビジネスだけが成功する人生を指しているのではありません。
ビジネス、人間関係、親子関係、余暇など、自分にとって大切なことを大切にできている状態が理想的な人生です。
ライフコーチングでは、理想的な未来を実現するために、現在もっとも大切にしたいことと向き合うための支援をおこないます。
周囲からの価値観や生きづらさによって自分の可能性を狭めている場合は、それらを取り除くこともライフコーチングに含まれるでしょう。
「ビジネスのような特定の領域はうまくいっているのになんだか満たされない」という方は、ライフコーチングを受けてみるとなにかが前進するかもしれません。
種類②:ビジネスコーチング
ビジネスコーチングは、ビジネスに関する理想的な未来を実現するためのプロセスの支援を目的にしています。
ビジネスをしていると、どうしても現状維持に流されてしまうものです。
会社員であればスキルアップしなくても生活していけますし、個人事業主であれば緊急度の高い仕事に追われて新しいことをおこなう余裕もないでしょう。
そうして現状維持に流されていき、自分の不満や望みを見てみぬふりをして動けなくなってしまうのです。
しかし、多くの人はビジネスで叶えたい理想や達成したいものを持っているものです。
少なくとも、今のまま人生を終えていくのは不安で不満であると感じています。
そういった人が現状維持から、自分の望みを叶えるためのプロセスを支援するのがビジネスコーチングです。
「今の仕事を続けたくない!」「もっと成長したい!」という想いがある人は、ビジネスコーチングを受けてみると現状を打破するきっかけを得られるでしょう。
準備中:現状維持は悪いのか
種類③:エグゼクティブコーチング
エグゼクティブコーチは、経営者や管理職を対象にしたコーチングです。
人をまとめあげる、人を導くといったリーダーシップ能力向上のプロセスを支援します。
強いリーダーがいて、指示すれば皆が従う時代は終わりました。
現在のリーダーは「個性あふれる人的リソースを最大限活用する」という高度なマネジメントスキルが求められています。
しかしそのスキルを向上させるためのマニュアルも教科書もなく、実践の中から試行錯誤しながらでしか培うことができません。
そんな過酷なプロセスを慎重に丁寧に歩んでいく支援をおこなうのが、エグゼクティブコーチングです。
マネジメントがうまくいかない場合は、人としての器の成長が求められているのかもしれません。
リーダーシップに課題を感じているのであれば、エグゼクティブコーチングを受けてみることをおすすめします。
種類④:NLPコーチング
NLPコーチングとは、上記の3つのコーチングとは異なり神経学をもとに開発されたコーチング手法のことです。
「人間は自分が望む結果を出すために自身の行動・自身の脳を『プログラム』することができる」と考え、その個人のプログラム解析とプログラムの書き換える過程を支援します。
NLPコーチングは、ICFが規定したコーチングとは根本から異なるものです。
非常にパワフルで行動変容に効果的だとされていますが、理論的根拠がないとも言われています。
とはいえ、NLPコーチングで実際に問題が解消されたり、人生を劇的に変えられたりした人がいるのも事実です。
NLPコーチングを受けたり学んだりしたい場合は、体験セッションに参加したり、実際に受けたり学んだりした人の感想を直接尋ねたりして、自分で判断することをおすすめします。
コーチングを学ぶことによる3つのメリット
コーチング技術は、コーチとして働かない人にとっても有効に働きます。
ここでは、コーチング技術を学ぶことによるメリットをお伝えしていきます。
メリット①:コミュニケーション能力が向上する
コミュニケーションとは対話であり、心地よい言葉のキャッチボールができる人こそがコミュ力が高いと言われます。
自分の話でその場を盛り上げられるからコミュ力が高いのではなく、相手に合わせた対話ができるからコミュ力が高いということです。
相手に合わせた対話をするための土台は、相手の話を聞き、相手の想いを聞き取ることです。
この聞く姿勢ができていないと、一方的に話したり、的外れなアドバイスをしたり、相手の喋る気力を奪ったりしてしまいます。
簡潔に話す、話で盛り上げるなどの話すテクニックは、聞く姿勢ができてからようやく身に付けられるものだと言えるのです。
コーチング技法では、この聞く姿勢を徹底的に学べます。
もしもあなたがコミュニケーションが苦手だと感じているならば、一度コーチングを学んでみると良いかもしれません。
メリット②:抵抗感が少ない指導ができる
上司から部下、講師から生徒のような関係では、教えたりフィードバックしたりして指導をおこないます。
しかし、「部下がまじめに聞いてくれない」「言ったことを否定する」などのように、教わり手の態度が気に食わないときがあるでしょう。
言うことを聞かせようと説得や説教、餌付けなどをするかもしれませんが、多くの場合なおさら抵抗感が強まり教わり手の態度は悪化します。
嫌なことを嫌な人から教わりたいとは誰も思いませんから、押しつけられた力と同等の反発をするのは当然なのです。
指導による抵抗感を抑えるためには、教え手と教わり手との間に信頼関係を築かなければなりません。
教わり手の態度を変えるのではなく、教え手の態度を変えることで信頼関係を築ければ、ようやく教わり手はアドバイスを聞き受ける準備が整うでしょう。
コーチングの効果は、コーチングスキルの高さよりも、コーチと相談者との信頼関係の強さが影響を及ぼすと言われています。
そのため、コーチングの技術を学ぶための書籍では、どうしたら信頼関係が築けて、どうしたら関係性が破綻するのかについて丁寧に書かれています。
あなたが指導者側であり、教わる側と上手く意思疎通できていないならば、信頼関係の築く方法をコーチングから学んでみるとよいかもしれません。
準備中:アドバイスを受け取れない人の心理とは
メリット③:悩むのではなく考えられるようになる
私たちは考える際、自分に対して問いを作ります。
しかし、この問いが抽象的過ぎたり、的外れであったりした場合は、どれほど考えても目的を果たせる答えを導くことができません。
その結果、永遠に同じ問いで悩み続けることにつながってしまいます。
たとえば、「今日の晩御飯を決める」という目的の場合。
まずはじめに立てる問いは「今日の晩御飯はどうしよう?」だと思います。
ですが、これでは質問の答えの範囲が広すぎて、適切な答えを導くことができません。
適切な答えを導くためには、次のように具体的な問いを立てて探り当てていくことが必要です。
- 昨日は何を食べたかな?
- 最近の健康状態はどうかな?
- なにを基準にして晩御飯を決めようかな?
このように効果的な問いを立てて順番に解いていく工程が「考える」であり、1つの問いだけを解き続けることは「悩む」でしかありません。
コーチングでは1つの大きな課題の答えを見つけるための問いの立て方を学べるため、「悩む」ではなく「考える」ための能力が身に付きます。
そのスキルを自分に活用すれば、効果的に考えることができ、思考時間を短縮することができるはずです。
自分が悩みやすいタイプだと感じているのであれば、コーチングを学んでみてください。
問いの立て方のコツが身に付けば、悩む時間を減らして前に進みやすくなるでしょう。
コーチングの学び方
コーチングスキルを習得するためには、どのように学べばよいのでしょうか。
ここでは、コーチングスキルを習得するための方法をお伝えしていきます。
学び方①:体系的に学ぶ
コーチングスキルを習得するには、コーチングを体系的に理解することが欠かせません。
「コーチングとはなにか」「コーチングはなぜ有効なのか」などの情報を網羅的に体系的に理解しましょう。
体系的に理解をするには、書籍を読んだりスクールに通ったりすることをおすすめします。
ただし、スクールや講師によってコーチングへの解釈が異なる傾向があるため、何で学ぶかは慎重になったほうがよいでしょう。
スクールや講師に教わるには高額の費用が必要になるため、まずはセミナーや書籍で教わりたい技術を探してみてください。
学び方②:コーチングを受ける
コーチングは独特な対話でおこなわれます。
どれほどコーチングの知識を身につけたとしても、このコーチング的対話は体験しなければ分かるものではありません。
「コーチングとはどういったものなのか」を肌で感じることで、より一層コーチングへの理解が深まるはずです。
コーチングの技術を習得する際は、ぜひとも熟達したコーチのセッションを受けてみてください。
学び方③:コーチングを実践する
コーチングを実践しようとしても、はじめのうちは何を質問すればいいのか、相手が何を感じているのかもわからないものです。
相手の話を遮って、一方的なアドバイスを直感的におこなってしまう人も珍しくありません。
しかし、コーチングスキルは技術であるため、実践するほどスキルが熟達していきます。
外側ではなく内側に焦点を合わせられ、相手を主体として対話を成立させられるようになります。
アドバイスをしない限り相手に迷惑になることはないですので、ぜひともコーチングを実践する場を設けてみてください。
学び方④:コーチングを指導してもらう
コーチング技術をさらに早く、もっと高度に磨きたいときはコーチングを指導してもらうことをおすすめします。
実際にコーチングをおこなっている場面を見てもらい、良い点・悪い点・修正案をフィードバックしてもらうのです。
自分1人でおこなうよりも振り返り作業が的確になるため、コーチングスキルの習熟速度が早まります。
ただし、先ほどもお伝えしたように、コーチによってコーチングの解釈や実施方法が異なる傾向があります。
あなたの理想的なコーチ像を明確にして、誰に指導してもらうかは慎重に検討してください。
コーチングの資格とその分類
コーチング資格には国家資格がなく、すべて民間資格です
誰でも「コーチ」と名乗ることができるため、かならずしも資格を取得する必要はありません。
しかし、コーチング資格は相談者に安心してもらうための材料になります。
ここでは、ICFと呼ばれる世界的に権威性が強いコーチング資格についてお伝えしていきます。
資格①:国際コーチ連盟(ICF)認定資格
国際コーチ連盟(以下、ICF)とは、トマス・レナード氏が立ち上げた団体です。
現在のコーチング手法を確立した団体であり、国内外でもっとも権威性のある資格を発行しています。
ICFから発行される資格は「ICF認定資格」と呼ばれています。
この資格は次の3つのレベルによって分類されています。
- ACC:セッション提供時間100時間以上
- PCC:セッション提供時間500時間以上
- MCC:セッション提供時間2500時間以上
ICF認定資格を取得するには、次の要件を満たして試験に合格しなければなりません。
- コーチング教育(ACTPパス/ACSTHパス/Portfolioパス)
- セッション提供時間
- メンターコーチング時間
試験では次のことをおこないます。
- コーチング筆記試験
- コーチングセッションの実践評価
近年のICFの筆記試験は非常に難化しており、合格率が低下しています。
これは誤訳の質が悪いことも要因の1つですが、いずれにしても容易に合格できるような資格ではないでしょう。
資格②:ICF認定スクールの独自資格
ICFの受験要件は、所持しているICF認定スクールの独自資格によっても変化します。
ICF認定スクールの独自資格にはレベルが振り分けられており、そのレベルによって免除される要件があるということです。
独自資格のレベルは次の3つに分けられています。
- ACTPパス:免除内容(教育時間、メンターコーチング、コーチングセッションの実践評価)
- ACSTHパス:免除内容(メンターコーチング、コーチングセッションの実践評価)
- Portfolioパス:免除なし
Portfolioパスとは、ICF認定スクール以外で学んだ人のことです。
Portfolioパスの場合は、ICFの教育基準が満たされていることを確認するための書類も必要になります。
ICF認定スクールの一覧は以下のホームページで確認できます。
https://icfjapan.com/post/credentials/566
資格③:その他スクールの独自資格
ICF認定スクール以外にも、多くのコーチングスクールが存在します。
ライフコーチングや子育てコーチングなどの専門に特化したコーチングスクールの多くは、ICFの非認定スクールだといえるでしょう。
とはいえ、非認定スクールだから詐欺まがいな商品というわけではありません。
ICF認定資格のMCCを取得した方が、非認定スクールでコーチングのスキルを教えている場合もあります。
コーチになるのではなくコーチングスキルを学ぶだけでよいならば、むしろ非認定スクールで学んだほうがコスパがよいことも多いです。
ICF認定スクール以外でコーチングを学びたい場合は、講師をよく観察することをおすすめします。
講師がPCC以上の資格保持者であるかを確認したり、実際のコーチングセッションを確認したりしてみてください。
また、スクールの資格取得が目的である場合は、そのスクールで取得できる資格の権威性をリサーチするとよいかもしれません。
コーチングの基本的スキル
コーチングを学ぶとき、かならず教わる4つのスキルがあります。
このスキルはコーチングをおこなう上で欠かせないものであり、コーチが磨いていくべきスキルです。
コーチングとはなにをするものなのかを理解するのにも役立つので、4つのスキルを簡単に説明していきます。
スキル①:傾聴
傾聴は相手の話を聞き取るための技術です。
相手の言葉、語調、トーン、テンポ、身振り手振り、表情などを観察します。
傾聴の目的は、次の3つのことを聞き取り、識別し、感じ取ることです。
- 言っていること
- 言わんとしていること
- 相手も気付いていないこと
たとえば、「お腹すいた」と子どもが発言したとき。
傾聴技術が低い人は「お腹がすいている」という言葉通りの認識にとどまります。
しかし、傾聴技術が高い人は「かまってほしいんだな」という言葉の裏にある感情にまで気づけるということです。
このように、相手の発している情報から多くの情報を取得する技術が傾聴です。
傾聴技術を高めるためには、相手に好奇心を持つことが重要だと言われています。
スキル②:質問
質問は相手の視野を広げたり、焦点を移動させたりするための技術です。
凝り固まった思考を解きほぐしたり、認知バイアスを解除したりするときに活用します。
たとえば「勉強したくない!」と子どもが発言したとき。
この子どもは目先の退屈で面倒くさい勉強にだけ焦点を当てています。
どれほど「勉強をしなさい!」と言っても、やる気なんてそうそう出るものではありません。
しかし、「テストで高得点を取れたらどんないいことがある?」という質問をすれば、目先の勉強から成功したときの未来まで視野が広がります。
「前回のテスト返却されたときなにを感じた?」と質問すれば、前回の悔しかった感情に焦点を当てられるでしょう。
そうして視野や焦点を変えることで、「勉強することのよさ」に気づくことができ、「勉強したくない」から「ちょっと勉強してみようかな」という結論へと変わる可能性が高まります。
このように、相手の視野や焦点を変えて、結論を導くための過程を確かめることが質問の目的です。
質問技術を高めるためには、質問とその質問による効果測定を繰り返すことが重要だと言われています。
スキル③:フィードバック
フィードバックは、受け取った情報を相手に返すための技術です。
相談者自身では気づきにくい情報を提供するときに活用します。
たとえば「速いボールを投げたい」という課題を持つ子がいるとき。
その子1人では、なぜボールが遅いのか、どうやったら速いボールを投げられるのかが分からないものです。
しかしあなたが熟練の指導者、もしくはその子が目指している理想のフォームを知っているならば、「肘が落ちている」「ステップの幅が狭い」などの情報を与えることができます。
その情報を得ることで、その子は新しい気づきが生まれて改善点を見つけられるでしょう。
このように「本人では気づきにくいが第三者からしたら気づける情報」を提供することがフィードバックです。
フィードバックする情報にフィードバック側の意見や評価を加えたらアドバイスや批判になることに注意してください。
スキル④:承認
承認は相手の行動や背景を共有するための技術です。
相談者のエネルギーを高めるときに活用します。
たとえば「テストで40点を取った」という子がいるとき。
「40点とれたんだ!すごいね」と褒めると、子どもによっては期待されていないと感じて落ち込むかもしれません。
「なんで40点しか取れないの!」と叱れば、勉強へのやる気が低下するのは目に見えるでしょう。
対して、「たくさん勉強してたね、がんばったね!」とその結果までのプロセスを承認すれば、少なくとも「もう勉強したくない」という気持ちは生じづらくなります。
もしかしたら「もっとがんばろう!」「もっと高得点を目指そう!」と思ってくれるかもしれません。
「結果の評価」ではなく「プロセスの肯定」をすることが承認です。
また、「あなたならがんばればきっと志望校に合格できるよ!」というような「可能性の肯定」も承認に含まれます。
コーチングを学ぶときにおすすめの書籍
ここでは、コーチングを学ぶときにぜひとも読んでほしい書籍をお伝えしていきます。
書籍①:インナーゲーム
「インナーゲーム」は、敵と自分との関係ではなく、自分と自分(セルフ1とセルフ2)との関係に着目してどうすれば自分のポテンシャルを最大限に発揮できるかを考察した書籍です。
内容はテニスプレイヤーに関する情報ですが、他のスポーツ選手やビジネスマンにも通じるものがあり、パフォーマンスに悩むすべての人が参考になるでしょう。
対話型支援方法が世に広まるきっかけとなった、コーチングと非常に関係性が深い書籍です。
コーチングにおける「自分の中の答え」を知れる本でもあるので、1度は読んでおくことをおすすめします。
書籍②:コーチングが人を活かす
「コーチングが人を活かす」は、コーチングのスキルや基本的な流れなど、コーチにとっての重要な基礎的な知識が含まれている書籍です。
日本市場に上場した株式会社コーチ・エィの取締役社長である鈴木義幸による書籍であり、日本のコーチングを知るための入門書にふさわしい内容になっています。
「コーチってこういうことをするんだぁ」ということを理解するのにはほどよい内容ですので、コーチング入門者はまずこの書籍から読んでみるとよいでしょう。
書籍③:コーチング心理学ハンドブック
「コーチング心理学ハンドブック」は、コーチングと心理学とのつながりを重点的に押さえている書籍です。
コーチングは行動コーチング、認知行動コーチング、ゲシュタルトコーチングなど、さまざまな心理学を背景にしたコーチングが発展しています。
それらの心理学ごとのコーチングについての理論と、それらのコーチングの実践例に関する内容です。
日本で広まっているコーチングは主に行動コーチングであり、心理学的な知識があまり必要とされていません。
しかし、なぜ行動コーチングが有効であると考えられているのかという心理学的な背景を知ることはコーチングを活用するときに役立つでしょう。
ただし、書籍の内容は非常に難解であり、ボリュームも膨大です。
私は一通り読み切るまでに3ヵ月を要したので、入門書としてはおすすめしません。
書籍④:決定版コーチング
「決定版コーチング」は、コーチのスキルや効果的であるための要素などの情報が含まれた書籍です。
「コーチングが人を活かす」と似たような内容ですが、「決定版コーチング」はコーチングやスキルが具体的に書かれており、コーチングをすでに実践している人向けの書籍といえるでしょう。
コーチングを実践してみて「なんだかうまくいかない」という人は、この書籍を読んでみることで新しい気づきが生まれるはずです。
書籍⑤:ポジティブコーチングの教科書
「ポジティブコーチングの教科書」は、ポジティブ心理学を活用したコーチング手法を説明した書籍です。
どうすれば強みを見つけられるのか、どうすれば相談者がもっと自分を活用できるのかなどの情報が含まれています。
コーチングの全体像を学ぶにはあまり適しておらず、コーチの手札を増やすための内容が豊富です。
相談者の可能性を最大化することへの悩みを抱いたコーチにとっては、新しい気づきを得ることができる良書です。
まとめ
コーチングとは、プロセスを支援するための対話型の技術です。
目標達成、目標計画の遂行、自己成長の促進などに対して有効に働きます。
次のような人には有用な自己投資先だと言えるでしょう。
- 夢を叶えたい!
- もっとがんばりたい!
- 少しでも成功確率を高めたい!
また、コーチングを学ぶことは、人間関係の改善やマネジメント能力の向上に役立ちます。
夫婦関係、親子関係、部下との関係に思い悩んでいるのであれば、コーチングから関係性の築き方を学んでみるとよいかもしれません。
ただし、コーチングを受けるにしても学ぶとしても、ベネフィットを得るまでには半年以上の期間を要します。
コーチングを受ける前に、コストやベネフィットを他の方法と比較して検討してみましょう。
準備中:成長を加速するための自己投資先とは