目標達成や課題解決を支援する職業として、コーチングとコンサルティングが有名です。
自分1人では解決が難しい問題が生じたとき、これらの専門職に相談することは有効な手段となります。
では、コーチングとコンサルティングはどのように使い分けたらよいのでしょうか。
この記事では、コーチングとコンサルティングの違いをお伝えしていきます。
コーチングとは
コーチングとは相談者の可能性を最大化して、刺激的な人生を歩むことを支援する技術です。
「衝動的や義務的な思考や行動」ではなく「本心から望む思考や行動」を促し、その経験を糧にするための支援をおこないます。
傾聴・質問・フィードバックなどの対話による支援をおこなうため、相談者には内省することと主体的であることが求められます。
よくあるコーチングを受けたことによる失敗談は「早く答えを教えてくれ」「すっきりはしたけど何も変わらなかった」です。
準備中:コーチングとは
コンサルティングとは
コンサルティングとは、相談者の問題を解決するための支援技術です。
相談者の問題を明確にし、現状とリソースから計画を策定し、どのように問題を解決すべきかを指導します。
ヒアリングとティーチングによる支援をおこなうため、相談者にはコンサルタントへの信頼と実行責任を持つことが求められます。
よくあるコンサルティングを受けたことによる失敗談は「求めていたのはその方法じゃない」「方法を試してみたけど何もうまくいかなかった」です。
コンサルコーチとは
コンサルティングとコーチングを併せて提供する商品もあります。
しかし、この商品の多くは単なるコンサルティングであり、ヒアリングの部分をコーチングとして言い換えているだけです。
もしもコンサルコーチの商品を買いたい場合は、その提供方法を確認してみてください。
コンサルティングとコーチングを時間で分けて提供しているのであれば、それは信用してもよい可能性が高いです。
対して、コンサルティングとコーチングを同じ時間内で提供しているときは、それは単なるコンサルティングであると認識したほうがよいでしょう。
コーチングとコンサルティングの5つの違い
ここでは、コーチングとコンサルティングの違いについてお伝えしていきます。
違い①:役割
目標達成を目指すときにおけるコーチングとコンサルティングの役割は以下の通りです。
- コーチングの役割:目標達成のプロセス全体への支援
- コンサルティングの役割:戦略・計画・スキルの支援
願望を実現するには、「目標設定→情報収集→計画策定→計画実行」という大まかなプロセスの実施が必要です。
コーチングでは、「目標設定→情報収集→計画策定→計画実行」の一連のプロセスを実行するための支援をおこないます。
対してコンサルティングでは、このプロセスの内の「情報収集→計画策定」を相談者に代わって提供します。
語弊を恐れずに車でたとえると、コンサルティングとコーチングの役割は次のように説明できます。
- コンサルティング→ゴールまでのルートを提示する(カーナビ的)
- コーチング→ゴールまでの困難な道のりを進み続けることを支援する(助手席的)
「問題解決までのプロセスの支援」と「問題解決の方法の提供」のどちらを求めているかを明確にすることは、コーチングとコンサルティングを使い分ける際の1つの判断基準になるでしょう。
準備中:問題解決の基本
違い②:支援方法
コーチングとコンサルティングの支援方法は以下の通りです。
- コーチングの支援方法:対話による問題解決
- コンサルティングの支援方法:知識提供による問題解決
コーチングとコンサルティングとでは取り扱う問題が異なるために、それぞれの支援方法が異なります。
コーチングでは「方法が分かるだけでは解決できない問題」を取り扱うため、対話によってその人の価値観やマインドの発見と変容を促して問題解決を目指します。
羞恥心・焦燥感・不安・恐怖・無意味感・無価値観などの実行に伴う抵抗感は、その人が持つ価値観やマインドに起因しているからです。
一方でコンサルティングは「方法が分かれば解決できる問題」を取り扱うため、知識提供によって問題解決を目指します。
「自分で購入することはできるが、何を買えばいいのか分からない」というときは、誰かに買うべきものを教わったほうが早いのと同じ理屈です。
自分の内側の答えを見つける必要があるのか、自分の外側の答えが分かれば十分なのかによって、自分に向いている支援方法が決まります。
「その答えが分かれば自分は問題解決できるのかだろうか?」という質問への答えは、コーチングとコンサルティングを使い分ける際の1つの判断基準になるでしょう。
準備中:目標達成にコーチングが有効な5つの理由
違い③:関係性
コーチとコンサルタントによる相談者との関係性は以下の通りです。
- コーチと相談者の関係:対等な関係
- コンサルタントと相談者の関係:師弟関係、上下関係
コーチングでは同じ目標に向かう対等な関係性を作ることを重視します。
1つの目標に対してざっくばらんに相談者が自分のことを話すためには、次の感覚を持つ必要があるからです。
- 何を話しても受け入れられる
- 私の夢や苦しみや頑張りを分かってくれる
一方でコンサルティングでは、提供する知識や解決策への信用が最も重要になります。
「この人の言うことは間違いない」と感じさせないと、その方法論を実行することに戸惑いが生じるためです。
次のような上下関係が築かれるのも、コンサルタントへの信用の表れだといえるでしょう。
- 師匠と弟子
- 先生と生徒
- 専門家と素人
目標を達成するためのパートナーが欲しいのか、師匠のような信用のおける人物が欲しいのかによって、自分に向いている支援方法が決まります。
「どんな人が自分の近くにいたら事業が前に進むだろうか?」を自問自答することは、コーチングとコンサルティングを使い分ける際の1つの判断基準になるでしょう。
違い④:契約期間
コーチングとコンサルティングの契約期間は以下の通りです。
- コーチング:プロジェクトに依存しない
- コンサルティング:プロジェクトに依存する
コーチングでは、相談者が契約期間を決めます。
内側の問題は相談者ごとに異なり、どのような計画を実行したらその問題が解決するかは誰にも分からないためです。
一般的に6ヵ月程度の契約期間が推奨されてますが、それはあくまでコーチングの成果を実感しはじめるタイミングであり、その期間で問題の解決を保証するものではありません。
一方でコンサルティングでは、プロジェクトの計画が契約期間を決めます。
外側の問題の多くは因果関係が明確であり、実施する内容によって問題解決までの期間を予測しやすいためです。
このように比べると、コンサルティングの方が問題解決までの距離が明確であり、効果的に関わってくれそうに感じるかもしれません。
しかし、その契約期間は提示された方法の実施にかかる期間であり、その方法が自分の問題の解決を保証しているわけではないことには注意が必要です。
違い⑤:費用
コーチングとコンサルティングの費用は以下の通りです。
- コーチング:コーチと相談者に依存する
- コンサルティング:コンサルタントと問題に依存する
コーチングでは、どのような目標や問題においても価格は一定です。
コーチングの価格は「コーチは誰か」「相談者は誰か」に依存し、実績のあるコーチほど、相談者の立場が希少であるほど価格が上がる傾向があります。
一方コンサルティングでは、どのような相談者においても価格は一定です。
コンサルティングの価格は「コンサルタントは誰か」「問題は何か」に依存し、実績のあるコンサルタントほど、難しい問題であるほど価格が上がる傾向があります。
ただし、コーチングもコンサルティングも、価格が品質を保証するわけではないことに注意してください。
「高いからきっと効果的だろう」と買うよりも、自分の財政状況を踏まえて信頼できる人を探すことをおすすめします。
コーチングに自己投資したほうがよいときとは?
ここでは、コーチングに自己投資をしたほうが有効になりやすいケースについてお伝えしていきます。
コーチ①:今後の方向性を探りたいとき
「何をするか」ではなく「何を選ぶか」に関する問題は、コーチングへの自己投資をおすすめします。
「何を選ぶとよいのか」という判断基準は自分の中にしかなく、それを見つけるためには内省を促すことが得意なコーチングが役立ちやすいからです。
今後の方向性を探りたい問題には、以下のものが挙げられます。
- 結婚や離婚をするか否かを決めたい
- 転職や起業をするか否かを決めたい
- 今後何をする人生にしたいのかを決めたい
準備中:理想の描き方
コーチ②:自分の行動・思考パターンを変えたいとき
「こうすればいいとわかっているのにできない」に関する問題は、コーチングへの自己投資がおすすめです。
ある行動に抵抗感があるときは、「技術的な成長」ではなく「精神的な成長」を求められます。
抵抗感の原因は信念や価値観であり、ノウハウではなく自分の内側を変容することが必要だからです。
精神的な成長には広い視野で自分の内側と向き合うことが必要であり、それは質問と傾聴によるコーチングが得意とする領域です。
自分の行動・思考パターンを変えたい問題には、以下のものが挙げられます。
- 稼ぎたいのにやる気がでない
- 人の意見を尊重することに抵抗感がある
- 「やらなきゃ」という焦燥感に駆られる
- 不安や恐怖を乗り越えるための勇気がない
- 他者からの評価が気になって情報発信ができない
準備中:精神的な成長を遂げる5ステップ
コーチ③:誰かと一緒に目標達成を目指したいとき
理想を実現するためのパートナーを求めるときは、コーチングへの自己投資をおすすめします。
コーチングでは、目標達成のプロセス全体をコーチと共有できるためです。
一般的に、事業主や会社員は、自分の夢や苦しみや頑張りを周りと共有することがなかなかできません。
表面的なことを語ることはあるかもしれませんが、社員・上司・同僚・家族には心の奥底にある本音を伝えられないものです。
「成功や失敗の結果だけを他者に評価され、そこにある自分の努力や葛藤を理解されない」というように、目標達成の過程は常に孤独感との戦いになりやすいでしょう。
しかしコーチングを受講すれば、目標達成を目指す動機や、立ち塞がる障害を乗り越える経験など、目標達成のプロセス全体をコーチと共有できます。
その共有によって生じる次のような感覚は、プレイヤーとしての孤独感を解消させ、より一層目標達成に没入させるのです。
- 何かあったらコーチに話せばいい
- コーチは私のがんばりをすべて知っていてくれる
1人で「考えなければならないこと」「苦しまなければならないこと」があるときは、何でも打ち明けられるパートナーとしてコーチに相談してみてください。
準備中:自分に合ったコーチの選び方
コンサルティングに自己投資したほうがよいときとは?
ここでは、コンサルティングに自己投資をしたほうが有効になりやすいケースについてお伝えしていきます。
コンサル①:右も左も分からないとき
新入社員のように未経験の領域で、何を調べればよいのかも分からないときはコンサルティングへの自己投資をおすすめします。
その領域の全体像や構造、情報の立ち位置を知るためには、書籍による情報以上に経験者からの言葉が役立ちやすいからです。
右も左も分からない問題には、以下のものが挙げられます。
- 何をすればよいのかが分からないとき
- なんだか自分には難しそうだと感じるとき
- 採用したい方法論が具体的にイメージできないとき
- 情報収集をした結果何を選べばいいのかがわからなくなったとき
コンサル②:成長よりも結果が重要なとき
「早く結果を出さなければならない」という状況のときは、コンサルティングへの自己投資がおすすめです。
コンサルティングは目標達成をするための戦略と計画を提供するため、自分で試行錯誤したり情報収集をしたりする手間が省けるからです。
結果的に目標達成の時間短縮につながるので、時間的リソースが不足している場合はコンサルティングを活用するとよいでしょう。
コンサル③:信頼できる人に教われる機会があるとき
「この人の言うことなら間違いない!」というような信頼できるコンサルタントがいるならば、その人の提供するコンサルティングへの自己投資をおすすめします。
問題解決は「どのような方法か」よりも「その方法を着実に改善していくこと」のほうが結果に影響を及ぼすためです。
信頼できるコンサルタントであれば、どのような方法を教わったとしても「成功にたどり着ける!」と信じられます。
方法を実施することに迷いがなくなって主体的に改善・改良を積極的におこなうようになり、たとえ質の悪い方法だったとしても目標達成や問題解決が一気に加速するのです。
重要なのは方法の確実性ではなく、コンサルタントへの信頼です。
心から信頼できるコンサルタントを見つけられたら、それは恵まれたチャンスですので、ぜひともその人が提供するコンサルティングを受けてみてください。
コーチングとコンサルティングの具体例
具体例①:フリーランス初動の自己投資
【質問】
フリーランスとしてwebライターで30万円を稼ぎたい。
しかし、情報やスキルは何も持っておらず、webライターで稼げないのではないかと不安に思う。
この目標を達成したい場合、コーチングとコンサルティングではどちらのほうが自己投資に向いているのか?
【答え】
・方法やスキルへの不安感を解消させないならば、コンサルティングがおすすめ
・目標や行動自体への不安感を解消させたいならば、コーチングがおすすめ
コンサルタントにもよりますが、一般的にはコンサルティングを受けることで「webライターで稼ぐためのロードマップ」と「稼ぐために必要なライティングスキル」を教えてもらえます。
「何をどうすればいいのか?」が分かれば前に進める場合は、コンサルティングの方が早く目標を達成できるでしょう。
コーチングでは、不安で立ち止まってしまう原因を取り除くための話し合いが中心になります。
稼ぎ方が分からないときは調べることへの抵抗感について話し合い、提案文を提出することに戸惑いがあるならばその原因について話し合って行動を促します。
未知の領域を歩むために必要な内面の成長を促しながら目標達成をしたい場合は、時間がかかるかもしれませんがコーチングがおすすめです。
また、一度コンサルティングを受けて稼ぎ方が分かったのに、なかなか計画を実行できないという人もいます。
その場合は、方法の問題ではなく内面の問題だと捉えてコーチングを受けたほうが前進する可能性が高いです。
準備中:フリーランスの稼ぎ方
具体例②:方向性迷子でやる気がなくなった個人事業主
【質問】
個人事業主としてある程度稼げるようになった。
しかし最近モチベが上がらなくなり、自分がどうしたらいいのか分からない。
この状況を抜け出すには、コーチングとコンサルティングではどちらのほうが自己投資に向いているのか?
【答え】
・自分の内側の情報と向き合いたいならば、コーチングがおすすめ
・外側の情報を集めたいならば、コンサルティングがおすすめ
一定以上稼げた個人事業主は、よく燃え尽き症候群に似た症状があらわれます。
「稼いで独立する」「自由に働く」という目標から生じていたモチベーションが、達成されたことで満たされてしまったことが原因です。
そのため、この状況から抜け出すには、新たなモチベーション源となる目標を見つける必要があります。
コーチングもコンサルティングも、モチベーション源を探す支援がおこなわれますが、以下の点で内容が異なります。
- コーチング:義務感や強制感に気づき、自分が充実感を感じる価値や内発的動機を見つけ、それを満たす方法発見と実行のサポート
- コンサルティング:強みを見つけてその強みにマッチした働き方の紹介、または成功するための指導
いずれにしてもこの問題では、新たなモチベーション源を見つけるための内省と検証作業をおこなうことがもっとも重要です。
真に欲しいものややりたいことを見つけようとすると行動が止まってしまうため、考えながら実行することを心がけてみてください。
準備中:やりたいこと探しを終わらせる方法
まとめ:最善はコーチとコンサルを両方つけること
コーチングでは「できるけどやりたくない」、コンサルティングでは「わからないからできない」に対する支援を得意としています。
成功するための方法やコツが分からないとき、調べる行為を支援するのがコーチングで、教えることで調べる手間を省くのがコンサルティングです。
フリーランス1年目のように「右も左も分からない」という場合は、コンサルティングの方が有効である可能性が高いです。
一方でフリーランス3年目以降のように「今後どうしたいか分からない」「必要な行動に抵抗感を感じる」などの場合は、コーチングの方が効果を実感しやすいでしょう。
しかしどのタイミングにおいての最善も、コーチングを受けつつ、必要な場合にコンサルティングを受けることです。
困難な問題であればあるほど、片方だけの自己投資では立ち止まりやすくなるので、余力があるのであればコーチングとコンサルティングの両方を受けることをおすすめします。