社会人になると、教わるスキルが求められます。
先生とは異なり、上司やコンサルはティーチングの専門家ではなく、メンター的な存在だからです。
もしも教わるスキルが低いと、相手の意欲を下げて何も教えてもらえなくなり、自分の能力を開花できなくなるかもしれません。
この記事では、教わる態度についてお伝えしていきます。
教わるスキルを向上するためにも、ここで紹介する情報を取り入れてみてください。
教わる態度の基本的な押さえどころ
教わるスキルが高い状態とは、相手がもっと教えたいと思えるように振る舞えることです。
そのためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 教える側に報酬感を与える→教えてよかった、もっと教えたい
- 教える側に安心感を与える→この教えている時間は無駄にならない
- 教える側に期待感を抱かせる→この人に私の知識を伝えたい、指導したい
ここでは、それぞれの要件についてお伝えしていきます。
要件①:教える側に報酬感を与える
報酬感とは、行動の結果として得られる利益のことです。
報酬感は行動の継続を促すとともに、再体験することへの欲求を強めます。
そのため、「私に教えることで良いことがある」と体感してもらえれば、指導意欲が高まることにつながるでしょう。
- 行動の継続:もっと教えたい
- 再体験の欲求:また次も教えたい
期待以上の報酬感が得られないと、その差分に比例するストレスを生じさせます。
教える側に強い不満を与える原因になり、「教えなきゃよかった」「もう教えたくない」という気分を促してしまいます。
要件②:教える側に安心感を与える
安心感とは、教える行為に意味を見出せている状態のことです。
安心感が伴った行動は充実感を生じさせて、重要なタスクを遂行できていると思わせます。
そのため、「私に教えることには意味がある」と体感してもらえれば、指導者としての役割を全うする意欲が高まるでしょう。
もしも安心感を提供できないと、次のような不快感が生じます。
- どうせ教えても無駄
- 私は都合よく使われている
- 私は私の時間を浪費させられている
要件③:教える側に期待感を抱かせる
期待感とは、「私が関わればもっとよくなる」という教わる側の可能性を認識することです。
期待感は指導意欲の核心であり、期待感さえ抱ければ他の要件を満たせなくても教えたい意欲が高まります。
一方で期待感がゼロであれば、報酬感や安心感があっても指導意欲はまったく上がりません。
期待感を抱いてもらうには、「知識を与えれば成長する」という可能性を魅せる必要があります。
モチベーションで躓いている場合は、期待感が低下して「教える価値がない」と判断される可能性が高まるでしょう。
教える側に報酬感を与える方法
ここでは、教える側に報酬感を提供するための方法をお伝えしていきます。
報酬①:前向きな態度で教わる
前向きな態度で教わることで、ポジティブな感情を提供できます。
感情は他者に感染する性質があるため、教える側は「教えたら元気になった」と快の経験ができるでしょう。
ただし、心地よい前向きな態度は人や場所によって異なります。
人に教わるときは、現状に相応しい前向きな態度を模索して調整するようにしてください。
準備中:元気になる方法
報酬②:教わった内容を実行する
「伝えた通りに行動してくれた」というのも、報酬になり得ます。
「私のことを信じてくれたんだ」という解釈ができ、その態度に対して喜びの感情が生じるためです。
納得できなくても、まずは言われた通りの内容を実行してみてください。
分からないことがあったら、実行する姿を見せて報酬を提供した後で尋ねるとスムーズに受け入れてもらいやすいです。
準備中:納得できないと先に進めない
報酬③:成果を嬉しそうに報告する
一度でも教えたら「教える側」は「教わる側」と一体化したような感覚になり、教わる側の成果が自分の成果のように感じます。
そのため、次のようなポジティブフィードバックも、教える側からしたら報酬になります。
- 実行内容における良かった点:実行しやすかった、分かりやすかった
- 実行したことで生じた良かった点:成功した、褒められた、効率的になった
成果報告は報酬の提供行為であるため、「あなたのおかげ」と嬉しそうに伝えましょう。
ネガティブフィードバックはストレス原因になりやすいので、関係性や相手の性格などによって伝えるかを判断してください。
準備中:アドバイスを受け取れない人の心理とは
報酬④:教える側にある強みを伝える
教える側の強みや工夫を伝えることは、自己発見と承認による報酬になります。
自分の強みや工夫に気づき肯定されることは、自己重要感が高まることにつながるためです。
説明内容ではなく、次のような相手自身のポジティブな部分を伝えるようにしてください。
- 声がきれい
- 情報整理が上手
- 伝え方が分かりやすい
「〇〇さんよりもよかった」という比較は、誰かを下げる行為であり揉め事の原因になります。
強みや工夫を伝えるときは、自分や他者と比較しないことに注意が必要です。
準備中:強みと弱みの関係性
報酬⑤:自ら心を開き関係性を深める
他者と関係性を深められるということは、「私は信頼されるに値する人間である」という証明になります。
自己重要感や自己肯定感などが高まるため、誰かに好かれるということは報酬感になるでしょう。
ただし、慣れ合うのではなく、相手を敬うことが大切です。
「教える側」と「教わる側」という距離感のまま、感謝と尊敬の念を持って関係性を深めましょう。
- 慣れ合いの関係:友達感覚、敬いの気持ちゼロ
- 敬いの深い関係:師弟感覚、感謝と尊敬の念を持つ、自分の内側を晒せる
教える側に安心感を与える方法
ここでは、教える側に安心感を提供するための方法をお伝えしていきます。
安心①:メモを取る
メモを取るような「全力で教わっている」という態度は、「あなたの時間を無駄にしない」という意思表示になります。
「自分の価値をないがしろにされていない」と教える側は安心できて、教える行為への抵抗感が和らぐでしょう。
しかし、がんばっているアピールだけでは意味がありません。
同じ質問は極力せずに、1度でも教わったことは尋ねないという心持ちが不可欠です。
たとえ尋ねるとしても、「やったこと+出てきた疑問」のセットで質問することをおすすめします。
安心②:目的と仮説を伝える
質問するときは、目的と自分なりの仮説を先に伝えましょう。
質問の目的が分からないと答えようがなく、双方の時間を無駄にしてしまうためです。
また、自分なりの仮説がないとどこまで分かっているのかのすり合わせが難しくなり、二度手間三度手間が発生します。
- 目的:何のための質問なのか、どんな成果物に対する課題なのか
- 仮説:どんなアプローチが考えられるか、それはなぜか
もしも仮説が用意できない場合は、試したことを伝えてください。
「〇〇の問題を解消するために△△を試したけれどうまくいかなかった」というように奥の手としてあなたに頼っていると伝えることで、教える側の自己重要感が下がることを防げます。
準備中:理想の描き方
安心③:定期的に進捗を伝える
「教えたから後はスムーズにいく」と教えた側は考えません。
教えたことはどうなっているのかヤキモキして、そこに注意力を奪われ続けます。
教える行為は責任が伴うものであり、教えてうまくいかなかったら教える側は自分の責任だと捉えてしまうためです。
そのため、定期的に教わった内容に関するプロジェクトの進捗を伝えることが大切です。
結果だけを伝えるのではなく、「ここまでやったけどこのまま続けて大丈夫そうか」と過程も報告しましょう。
進捗を伝え、良し悪しのフィードバックする機会を提供することで、教える側は安心して自分の作業に集中できるようになります。
安心④:一字一句に興味を持つ
教える側のほとんどは、ティーチングのプロではありません。
感覚的に仕事をしており、すべてのコツや重要なポイントを言語化しているわけではないでしょう。
そのことは教える側も認識しているため、教わる側には一字一句に関心を向けて、自分で思考しながら吸収してほしいと考えます。
だからこそ、教わる側は尋ねたい内容だけではなく、その内容に関連する情報すべてに意識を向けることが必要です。
すべてを覚えきれないとしても、「相手は無駄な話をしていない」という認識を教わる側が持つことで、教える側は安心して情報開示できるようになります。
一字一句に興味があるということは言語では伝えづらいので、相槌のようなリアクションで意思表示してみてください。
安心⑤:「要約+考え」を伝える
教える側は情報開示やフィードバックが役割ですが、教わる側にも認識のすり合わせという役割があります。
「何が分かってどう感じたのか」と認識をすり合わせなければ、教える側が両方の役割を担うことになり負担が増大します。
例.教わる側の反応↔教える側の思考
・分かりました:本当に分かったのかな
・分かりませんでした:どこが分からなかったんだろう
指導とは、お互いの認知のすり合わせによる知識やスキルの共有化です。
にもかかわらず教わる側が認知をすり合わせる努力をしないと、教える側は「歩み寄っているのは自分だけ」と感じて苛立ちを募らせてしまいます。
教わる側は自分の役割を果たすためにも、教わったらかならず「要約+考え」を伝えて認識をすり合わせる努力をしてください。
教える側に期待感を抱かせる方法
ここでは、教える側に期待感を抱いてもらうための方法をお伝えしていきます。
期待①:目標が高い
目標に向けて努力している人に対しては、「何かしてあげたい」という応援したい衝動に駆られます。
相手の役に立てるイメージが明確になったり、その人が目標達成する姿を見たいと感じたり、さまざまな要素によって指導動機が強まるためです。
★指導動機を強める要素例
・援助欲求:苦しんでいるところを見たくない
・影響欲求:私はあなたに影響できる
・検証欲求:私の方法なら上手くいく
・報酬欲求:私はあなたの成功した姿が見たい、教えるとお金をもらえる
・公平化欲求:そんなに頑張っているのに結果が出ないのは不公平だ
ただし、ただ努力しているだけでは強い興味を抱かれません。
教える側が共感するような地に足の着いた高い目標でないと、どこか他人ごとになってしまいます。
共感しやすい目標とは、自分軸が土台の目標です。
- 共感しづらい目標:人気者になりたいからアイドルを目指す、ラクに成功したい
- 共感しやすい目標:私のような孤児に夢を与えたいからアイドルを目指す
「お金が欲しい」「有名になりたい」ではなく、さらに掘り下げた自分ならではの価値観に沿った目標こそが他者に興味を持たれます。
教わるときは、自分がレベルアップする必要性や目的を掘り下げてから目標を設定してみてください。
準備中:目標の設定方法
期待②:貢献意欲が強い
誰かに貢献しようと努力している人には、次の理由から成功してほしいと感じるものです。
- 精神の熟達:この人は素晴らしい人間性だ、大人だな
- 返報性の法則:助けてもらったから何かを渡したい
「この人が成長すれば私や組織のためになる」と認識することで、指導者は成長を促したいと考えるようになります。
そのため期待感を抱くという意味では、精神の熟達さを見せることが重要になるでしょう。
精神が熟達していることを認識されるには、所属している共同体への貢献意識を見せることをおすすめします。
他者貢献に積極的な自他統合的である態度は、自己中心的や他者中心的な振る舞いよりも「大人である」と認識されやすいためです。
- 自己中心的:私のためだけにがんばる、仲間の利益はどうでもいい
- 他者中心的:仲間のためだけにがんばる、私の利益はどうでもいい
- 自他統合的:私と仲間の利益が最大化するようにがんばる
例.成長意欲
・自己中心:好待遇の職場に転職するために成長したい
・他者中心:上司がご機嫌でいるために成長したい
・自他統合的:出世して恩返ししたいから成長したい
準備中:成功や成長に欠かせないマインドとは
期待③:今を楽しんでいる
この人は成長しそうだと感じる要素として、振舞い方が挙げられます。
同じ厳しい訓練であっても「つまらなそうな人」と「楽しそうな人」とでは、後者の方が潜在能力が高そうと感じられるでしょう。
「好きこそ物の上手なれ」という言葉もあるように、取り組む内容を楽しむ能力が高いほど成長しやすい傾向があるためです。
挑戦を楽しむには、次の3つのスキルが重要になります。
- 報酬を期待する技術
- 報酬を獲得する技術
- 報酬を見つけて味わう技術
このスキルの土台となるのは、良好なコンディションです。
仕事や作業がつまらないと感じているならば、まずはストレス発散と快適な睡眠を心がけてみてください。
準備中:挑戦過程の楽しみ方
期待④:真剣で積極的な態度
「専門性の価値を認識している人」と「そうでない人」なら、多くが前者の人の方が成長余地が大きいと考えるでしょう。
高い物を大切に扱うのと同じで、価値があると認識した専門性について学ぶ人は教わったすべてを吸収しようとする態度が想像できるためです。
「その専門性は価値がある」という認識は、真剣で積極的な態度として表現できます。
一方で真剣で積極的ではない態度は、「次の2つの要素に対して価値を感じていない」という意思表明として解釈されて教える意欲を低下させます。
- 誰に教わるか:大谷翔平に教わる態度↔野球未経験者の話を聞く態度
- 何を教わるか:絶対に成功できる方法を教わる態度↔机上の空論を教わる態度
準備中:精神的な成長を遂げる5ステップ
期待⑤:仮説に基づく行動量が多い
問題解決や目標達成をしたいとき、行動は次の3タイプに分類されます。
- 行動しない
- 同じ行動を繰り返しつづける
- 毎回異なる行動を試しつづける
このうち、もっとも成長しやすそうなタイプは「毎回異なる行動を試しつづける」でしょう。
「自分で考えながら動ける人間だ」と捉えられて、ちょっとしたきっかけで大きく飛躍するだろうと容易に想像できるためです。
教える側に期待感を持たせるためには、自分で考えながら動いている姿を見せるようにしてください。
「黙っていても勝手に成長できるだろう」と認識されることで、余計な口は挟まれづらくなり、質問にも答えてもらえるようになります。
★異なる行動を試す手順
異なる行動を試すことは大切ですが、1つの行動を繰り返すことも同じくらい大切です。
1回では上手くいかなくとも、何回も繰り返すことで上達して成功確率が上がるものだからです。
異なる行動を試すときは、次の手順をおこなってみてください。
①複数の仮説を用意する
②どの仮説から試すかを決める
③その仮説を何回繰り返す必要があるかを設定する
④設定した回数を試しても上手くいかない場合は次の仮説に移る
準備中:問題解決の基本
教わり上手になるためのマインド
ここでは、教わり上手になるためのマインドについてお伝えしていきます。
教わるときは、ここで紹介するマインドを意識してみてください。
マインド①:相手の労力には価値がある
「相手の労力には価値がある」という前提を持つことで、教えてくれる相手を敬えるようになります。
このマインドを身につけるには、次の2つの視点が役に立つでしょう。
- 教える側の労力的価値:教えるために生じるコスト
- 教える側の経験的価値:教える内容を得るまでに費やしたコスト
教わるということは、教わる側にコストを支払わせる行為です。
たとえ会社の命令であっても、教える側が支払うコストが無くなるわけではありません。
教わるときは相手の価値を敬い、相手の労力や経験を無駄にしないことを心がけてみてください。
マインド②:私の目標達成を相手に手伝ってもらう
誰かに教わってその内容を実行するとき、やらされている感に支配されることがあります。
しかし、不機嫌になったり好き嫌いでえり好みをしたりするなどの態度は、教える側にとっても嬉しいものではありません。
教わることによるやらされている感を解消するには、「教える側を活用する」という前提を持つことが有効です。
「言われたから仕方なく行動する」のではなく「目標のために情報を集める」と捉えることで、教わる動機が強まります。
教わるときにやらされている感が生じたら、「なぜ教わる必要があるのか」を徹底的に掘り下げてみてください。
教わったほうがいいと思える納得できる答えが見つかることで、相手を活用するマインドが身に付きます。
★殻を破ろう
「教える側を活用する」というマインドは、情報を自分が取捨選択するということです。
しかし、未熟な自分の「良し悪し」や「好き嫌い」の尺度は当てにならず、それに従っている限り殻を破ることは難しいです。
納得できない方法を教わったときは、「それでは上手くいかないだろう」と決めつけずに、まずは実行して経験を増やしてみてください。
自分1人では選ばなかった手段を経験することで、殻を破るほどの大きな成長が期待できます。
準備中:仕事におけるやらされている感の解消方法
マインド③:私には潜在能力はあるが実力が足りない
教わるときは、自分の潜在能力を信じながらも、現状の低い実力を客観視することが大切です。
この2つの条件を満たさないと、次のような態度を助長させるためです。
- 潜在能力を信じられない:どうせ教わっても無駄という消極的な態度
- 自分の実力は高いという誤解:教わる必要がないという横柄な態度
2つの条件を満たすには、教える側のことを深く知ることが有効になります。
たとえば、以下のことについて検討してみてください。
- その人はどれほどの努力をしてその専門性を獲得したのか
- その人と自分にはどれほどの違いがありそれは重要なことなのか
もっとも多いケースは、自分の潜在能力を信じられないことです。
「できるようになる気がしない」という感覚を抱いたら、「努力したらできるようになるのか」を教える側に尋ねてみることをおすすめします。
準備中:自信のつけかた
教わる側がよく持つ2つの勘違い
ここでは、教わるスキルを下げやすい勘違いについてお伝えしていきます。
勘違い①:教える側に期待する
教える側に対して、高い指導スキルを期待してしまうことがあります。
たとえば次のような苛立ちなどは、指導スキルに対する不満です。
- 必要なことだけを教えてほしい
- 情報を整理してから教えてほしい
- できないのは教え方が悪いからだ
指導スキルが高い人から教われば、たしかに習得も早くなります。
しかし、たいていの教える側は指導スキルを高めることに関心がなく、その義務もありません。
また、指導者を選べないため、教える側に期待してもストレスばかりが募ります。
教える側には教える側の、教わる側には教わる側の役割があります。
相手に期待するのではなく、自分の役割にだけ集中するようにしてみてください。
- 教える側の役割:自分の経験を共有すること
- 教わる側の役割:教える側を活用して習得すること
例.教える側のレベル
・レベル1:内容を教えられる←多くの指導者はこのレベル
・レベル2:効果的・効率的に内容を教えられる
・レベル3:やる気のない人にも「レベル2」を提供できる←期待しがちなレベル
準備中:他責思考の直し方
勘違い②:正誤を判断できると思い込む
教わる側によくある勘違いとして、内容の良し悪しを判断できるというものがあります。
具体的には、次のような判断のことです。
- この内容は役立つだろう
- この内容は実行しても無駄だろう
しかし、これは認知バイアスの一種による誤った解釈である可能性が高いです。
教わる側には正誤を判断できるだけの専門的知識や文化的知識が不足しているのに、それを持っていると過信してしまうことによって認知が歪みます。
- 専門的知識:技術的な知識、経験
- 文化的知識:国や会社などの風土
この認知バイアスは「ダニング=クルーガー効果」とも言われており、特に初心者が陥りがちです。
※ダニング=クルーガー効果
「スキル練度が低いうちは自分の能力を過大評価する傾向がある」という認知バイアス
教わった内容を軽視する場合、その根拠を検討してみてください。
可能であれば、その根拠を検証するために教わった内容を実行することをおすすめします。
例.正誤を誤解する根拠
・経験則:今までは〇〇だったからこれは間違っている
・ハロー効果:博士号を持っている人が言うのだから正しいだろう
・相手への高感度:この人は信頼できるからこの情報は正しいはずだ
教わる態度を悪化させる原因3選
ここでは、教わる態度が悪化するよくある原因についてお伝えしていきます。
教わるスキルが低い原因を探るときの参考になれば幸いです。
原因①:効率主義
効率主義とは、コストパフォーマンスやタイムパフォーマンス第一主義のことです。
- コストパフォーマンス:費用対効果
- タイムパフォーマンス:時間対効果
教わるときに効率主義が発動すると、教わった内容への抵抗感が強まります。
要点をピンポイントに知りたいという欲求が高まり、それ以外への関心が弱まるためです。
たとえば効率主義が発動すると、教わる態度は次のようになります。
- 行動や変更が必要な理由を求める
- 焦燥感によって基礎的な実行を怠る
- 言語化が難しい重要なポイントを軽視する
- 自分なりに解釈することを一切おこなわない
- 誤りを指摘されてもどうすべきかを自分で考えない
効率化することは重要ですが、それは教える側の伝えたい内容を理解してからです。
理解する前に効率主義が働くと、現状維持バイアスによって「何もしないこと」を選びたくなり、教わる行為自体に苛立つようになります。
効率主義が働いていると自覚したら、「目先の結果」だけではなく「その先にある理想的な未来の自分のありかた」に目を向けてみてください。
- 目先の結果:テストで100点を取る
- 未来の自分のありかた:最先端の研究テーマを取り扱っている
- 未来に必要なありかた:情報を集め、自分なりに仮説を立てて、検証する態度
準備中:効率思考は悪いのか
原因②:過去への執着
過去への執着とは、次の2つの経験が認知や行動に強く影響する状態のことです。
- 過去の成功体験:成功したパターンを好むようになる
- 過去の失敗体験:失敗したパターンを敬遠するようになる
過去に執着すると、情報を客観視することができなくなります。
「教える側の知識や経験」よりも「自分の経験」を重要な評価軸にして、情報や行動を取捨選択するようになるためです。
しかし、教わるという行為は新たなパターンを試す機会です。
過去に囚われている状態では成長を促すことが困難なので、教わるときは過去の経験を一旦脇に置くことをおすすめします。
準備中:自己正当化の直し方
原因③:プライドの高さ
教わる行為を阻む最大の原因は、プライドの高さです。
完璧な自分であり続けようとする欲求によって、教わることへの抵抗感が強まり、難しそうな挑戦を回避しようとします。
隠れて努力をする意欲は高めますが、人前で努力することを嫌うため、課題が難しくなるほど成果を出しづらくなるでしょう。
- プライドが高い:陰で努力する、成果を出せないと感じると手を抜く
- プライドが低い:教わることに抵抗感がない、競争が嫌い、頑張る理由が大切
早熟型の人は、プライドが高まりやすくなる傾向があります。
最初から周りよりもできてしまうため、「センスある私」を自他ともに期待されがちで、弱みを見せられなくなるためです。
- 早熟型:最初の成長スピードが早い(優等生タイプ)
- 晩熟型:後から成長スピードが早まる
プライドの高さにより素直に教われないと感じたら、核心となる隠れた恐れを見つけてみてください。
「自尊心が低下するできごとによって何が起きるのか」を検討することで、プライドを手放せるきっかけになります。
例.プライドが高いシグナル
・嫉妬しやすい
・フィードバックが怖い
・知ったかぶりをしやすい
・低評価されることを恐れている
・アドバイスされると不機嫌になる
・教わっても「知ってた」と捉えやすい
・できないのは教え方が悪いと考えやすい
準備中:完璧主義を手放す方法
教わりべたな個人事業主が陥る失敗例
ここでは、教わるスキルが低い個人事業主が遭遇しやすい失敗例についてお伝えしていきます。
ケース①:自己流になる
教わることが苦手な人は、他者からの指導を回避しようとします。
「まずは自分のやり方で試してみる」と意気込み、情報収集もロクにせずに自己流への道を歩んでいくでしょう。
自分なりに仮説を立てて実行する態度は素晴らしいのですが、自己流のほとんどは成果が出ません。
厳密にいえば、成果が出るまでの期間が大きくなり、リソースが先に尽きてしまいます。
たとえ「このままでは成果が出ないかも」と直感で感じ取っても、教わることや教わった内容を活かすことが苦手なため、軌道修正もできずにジリ貧となり失敗してしまうでしょう。
守破離という言葉もあるように、まずはその業界の全体像や基礎、押さえどころを知り、初歩的なスキルを体得することをおすすめします。
そのためにも、教わった内容を活かせない自分の課題と向き合い、教わるスキルの向上を目指してみてください。
準備中:自己流は事故る
ケース②:ノウハウコレクターになる
他者から教わることが苦手でも、インターネットや書籍から知識を仕入れることが好きというタイプが存在します。
論理的な部分だけに興味を示し、実践的な部分の経験が乏しいような、評論家的な立ち位置に落ち着くようなタイプです。
趣味であるなら知識欲を満たせて幸せでしょうが、この傾向はビジネスでは失敗の原因になります。
知識が集まれば集まるほど自分や他者への基準が高まって、実行することや教わることに抵抗感が強まるためです。
- 自分への基準:実際の能力レベルと自己認識している能力レベルのギャップが広がる
- 他者への基準:「そんなの知っているよ」と実践的な重要さよりも論理的な真新しさを重視する
ビジネスでは、10のインプットよりも、1の実行の方が価値ある世界です。
実践的な経験を積めないと、いつまで経っても個人事業主として次のステップに進めません。
とはいえ、自分1人だけだとインプットばかりしているという自覚はなかなか持てないでしょう。
もしもがんばっているのに結果が出ないと感じたら、改めて目標設定と計画立てをおこなってみてください。
自分1人ではそれらが難しい場合は、コーチングのような目標達成の専門家の支援を受けることをおすすめします。
準備中:目標達成にコーチングが有効な5つの理由
ケース③:自己投資を十分に活用できない
個人事業主が誰かに教わろうとしたら、たいていは自己投資をおこなうことになります。
個人事業主界隈であれば、コンサルやオンラインサロンが主な自己投資先になるでしょう。
しかし、教わるスキルが低い人は、自己投資をしても投資対効果は低くなりがちです。
たとえば以下のように、自己投資を活かすことへの態度が消極的になるためです。
- 反発:教わった内容は間違っていると断定して実行しない
- 買って満足する:幽霊部員になる
- お客様感覚になる:言われたことしかやらない
- グループに馴染めない:自ら質問しない、傍観者
自己投資をしても成果が出ないときは、その原因は次の2つに分けられます。
- 実行量不足:教わった内容をマスターするまで練度を高めていない
- 誤った自己投資先:ノウハウが間違っている、今必要な情報ではなかった
もしも実行量不足なのであれば、その原因を突き止めてください。
その原因から目を背けているうちは、他に自己投資をしても同じ失敗を繰り返してしまいます。
準備中:成長を加速するための自己投資先とは
まとめ
教わり上手な態度になるためには、次の3つの要件を押さえる必要があります。
- 要件①:教える側に報酬感を与える
- 要件②:教える側に安心感を与える
- 要件③:教える側に期待感を抱かせる
教わり上手とは、相手の教えたい欲求を強めるスキルです。
教える側も人間であり、誰に対しても前向きに教えたいと考えるわけではありません。
教える側を乗り気にさせることで、よりよい情報やフィードバックを得られるようになります。
ただし、教わることは迎合することではないことに注意が必要です。
尻尾を振ってご機嫌取りをするのではなく、自分の目標のために教える側を活用するという前提がなければ、ただの都合の良い使用人と変わらなくなります。
教わる態度を改善するときは、まずはなぜ教わる必要があるのかを検討して、「自分のために教わる」というマインドを身につけてください。