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自己受容を進めるステップとは?3つの方針と15の方法

ありのままの自分を受け入れられなければ、次のような行動を選びやすくなります。

  • 自分の能力不足を受け入れられずに、重要な課題と向き合えない
  • 自分の願望をダメなものと認識して、他人のためにがんばってしまう

この記事では、自己受容をするための方法についてお伝えしていきます。

自分のためにがんばりたいのであれば、働きつつも自己受容の態度を身につけていきましょう。

目次
  1. 自己受容とは何か
  2. 自己受容と類似した態度の違い
  3. 自己受容の3つのステップ
  4. 自己受容するための3つの方針
  5. 視野を広げて自己受容を促す方法5選
  6. 期待を下げて自己受容を促す方法5選
  7. 現状に納得して自己受容を促す方法5選
  8. 自己受容の阻害要因4選
  9. 個人事業主に自己受容が必要な理由3選
  10. 自己受容の注意点
  11. まとめ

自己受容とは何か

自己受容とは、「良い面」も「悪い面」も含めてすべての自分を合理的に受け入れようとする態度のことです。

理想に届いていない現状の自分に不満を持ちながらも、「まぁこんなものか」と納得する態度が自己受容になります。

私たちはよく「本物の自分(好きな自分)」と「偽物の自分(嫌いな自分)」とに分類しますが、すべての自分は自分の一部です。

「現在や過去のすべての側面の自分は自分である」と認める態度が自己受容であり、自己愛や自己肯定とは別の概念であることに注意してください。

例.自己受容
・他人に嫉妬している自分を受け入れる
・やりたくないと考えている自分を受け入れる
・がんばりたいと感じている自分を受け入れる
・人生が退屈だと感じている自分を受け入れる
・恥ずかしい夢を持っている自分を受け入れる

出典:https://www.nankyudai.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2022/04/HDR5_0003.pdf

自己受容と類似した態度の違い

ここでは、自己受容と類似した概念との違いについてお伝えしていきます。

違い①:自己受容と自己肯定

自己受容と自己肯定の違いは、次の通りです。

  • 自己受容:すべての自分を自分だと受け入れようとする態度
  • 自己肯定:自分には価値があるという認識

健全な自己肯定とは見栄をはることではなく、良い面も悪い面も含めた自分の存在そのものを肯定することです。

何を根拠に自己肯定するかは、自己受容の進み具合によって変わります。

★自己受容と自己肯定
・自己受容〇:ダメな自分含めて私の存在には価値がある
・自己受容×:ダメな自分はいるけどお金や地位があるから私には価値がある
・自己受容×:「悪い面」の自分は本当の自分ではなく「良い面」の私には価値がある

健全な自己肯定をするには、「すべての自分を自分として認めること」という自己受容が最大の難関になります。

「〇〇があるから私には価値がある」という思い込みを手放すためにも、自分にとっての価値とは何かを検討してみてください。

違い②:自己受容と現状満足

自己受容と現状満足の違いは、以下の通りです。

  • 自己受容:お腹が空いていることを受け入れる
  • 現状満足:自分のお腹が満たされていることを認識する

私たちは強い不満体験をしたら、その欲求をいくらでも満たそうとする傾向があります。

そんな自分に対して「本当はもうそれなりに満たされているんだ」というように、「ない」ではなく「ある」を見る行為が現状満足です。

自己受容は「ある」も「ない」も認識して受け入れる行為であることから、現状満足は自己受容の土台になるでしょう。

違い③:自己受容と開き直り

自己受容と開き直りの違いは、以下の通りです。

  • 自己受容:ダメな自分と向き合うこと(まぁこんなものか)
  • 開き直り:ダメな自分を無視して次に進むこと(まぁいっか、どうせ私はダメだから仕方がない)

開き直りは自己正当化の一種であり、自分を受け入れることではありません。

前進をするときには開き直りも有効になり得ますが、他責思考と結びつきやすい点に注意が必要です。

自己受容の3つのステップ

自己受容は次の3ステップで進みます。

  1. 自己否定の対象となっている自分を見つける
  2. 自己否定していることを受け入れる
  3. 自己否定している自分をどうしたいのかを明確にする

ここでは、それぞれのステップについてお伝えしていきます。

ステップ①:自己否定の対象となっている自分を見つける

まずは、どんな自分を否定しているのかを把握することから始まります。

否定している自分を見つけるには、次の兆候がヒントになるでしょう。

  • その自分を直視できない
  • その自分を他人に晒したくない
  • その自分について考えると不快感が生じる
  • その自分であることで損失が生じると感じる
  • その自分であることはルールや倫理、マナー違反だと感じる

ステップ②:自己否定していることを受け入れる

否定したい自分を見つけたら、その感覚が自分にあることを受け入れましょう。

次の2つの自分を俯瞰して、「2つの私が争っているなぁ」と眺めるようなイメージです。

  • 否定したい自分
  • 否定されている自分

ステップ③:自己否定している自分への期待を明確にする

自己否定をしている自分は、直感的な他人軸である場合が多いです。

「働きたくない自分はダメなんだ」と外側の価値観で良し悪しを決めて、一般的にはダメな自分を拒絶しようとします。

しかし、「働きたくない自分」がいるのも事実であり、それを否定したからと言って消えるわけではありません。

このいたちごっこのような状況を解消するには、本心による今後の方針を立てることが有効です。

以下の質問を自問自答して、「否定したい自分」と「否定されている自分」の言い分を聞いてみてください。

  • 否定したい自分への質問:なぜ否定したいのか?それは誰の判断基準なのか?
  • 否定されている自分への質問:なぜ否定される意見を持っているのか?本当は何を期待しているのか?

自己受容するための3つの方針

ここでは、「自己受容の3つのステップ」を進めるための方針についてお伝えしていきます。

方針①:視野を広げる

自己受容のステップが進まない理由の1つが、視野狭窄です。

見えている範囲が狭く、偏った経験や知識を根拠に自分への否定感情を強めてしまいます。

視野が狭いあいだは、自分を俯瞰することも、内省することも難しいです。

何度考えても同じ思考をループしてしまう場合は、視野を広げることから始めてみてください。

方針②:期待を下げる

自己受容を進めるときは、自分への期待を下げることが有効になります。

理想と現状のギャップが大きいほどストレスが強まり、感情的に自分を拒絶しやすくなるためです。

このギャップによる不快感を弱めるためには、期待を下げて現状とのギャップを小さくするしかありません。

期待を下げるには、主に次の2つの対策が考えられます。

  • 理想の位置を修正する
  • 理想と現状の間に目印を立てる

方針③:現状に納得する

「今の自分であること」を合理的に納得することで、成功も失敗も含めた自分を受け入れやすくなります。

現状に納得するとは、具体的には次のような特徴を持つことです。

  • 「できていること」と「できていないこと」を認識している
  • 「だから私はこの状態なんだ」と原因と結果を合理的に理解している
  • 「すごく優れた現状」を諦めると同時に「未来への可能性」を期待している

多くの人にとって現状とは理想までの道半ばであり、あまり満足のいく評価ができない対象でしょう。

しかし、現状を正しく捉えて、「その不満の裏には理想があるからだ」と認めることが自己受容です。

  • 自己受容〇:理想と現状のギャップによる不快感を認める
  • 自己受容×:「これは何かの間違いだ」と現状を受け入れない

非合理的な根拠を用いて過去や現状の自分を正当化し、現状の自分を偽ってしまうことには注意してください。

たとえ現在がネガティブな評価であっても、「今はまぁこんなもんだよな」と現状に納得することが重要です。

★よくある現状否定
・私は才能あるのに、環境が悪いから失敗したんだ
・私に問題があるのではなく社会に問題があるのだ

視野を広げて自己受容を促す方法5選

ここでは、自己受容を促すために視野を広げる方法をお伝えしていきます。

視野①:リフレッシュする

思考や感情に囚われている状態では、視野広く物事を考えられません。

そのため、心身ともにリフレッシュして、思考や感情を手放すことが視野を広げるには有効です。

★リフレッシュ方法例
・散歩
・音楽
・寝る
・瞑想
・自然に癒される
・遊びに没頭する
・モヤモヤを書き出す
・刺激的な体験(旅行、人との交流など)

同じ思考を繰り返してしまう場合は、まずは視野が広がる身体づくりから始めてみてください。

心身が元気になり頭の中をリセットできれば、新しい視点で自分と向き合えるようになります。

準備中:元気になる方法

視野②:強みと弱みを明確にする

自分の強みと弱みを明確にすることで、自分の存在そのものを受け入れやすくなります。

「私は〇〇が苦手かもしれないけど、△△はマシだよね」と思えることで、強みも弱みもある存在が自分なんだと視野が広がるためです。

自己否定をするときはたいていが自分の欠点だけに焦点が当たっており、「私は欠陥品だ」という感覚を抱いてしまいます。

しかし、人は誰もが得手不得手があるものです。

自分の特性を理解することで、弱みだけではなく強みにも焦点が当たるようになり、「まぁ悪くはないか」という感覚が抱きやすくなります。

準備中:強みと弱みの関係性

視野③:アファメーションを活用する

すべての結果は見方によって、ポジティブにもネガティブにも捉えられるものです。

この捉え方を変える技術のことを、アファメーションといいます。

自己否定の多くは、ものごとを悲観的に捉えてしまうことが原因です。

そのため、次のようにアファメーションを活用すれば、「それほど悪くはないか」と自分を受け入れやすくなります。

  • 失敗した→これで次は成功しやすくなる
  • バカにされた→痛みを知った私はもっと優しくなれる
  • ビジネスがうまくいかない→この経験はマーケティングで活用できる

自己受容は合理的に受け入れることが重要です。

認知を極端に歪ませないためにも、1つの側面だけではなく、複数の側面から解釈をするようにしてみてください。

準備中:楽観的と楽天的の違いとは

視野④:他者に相談するスキルを高める

視野を広げる最も簡単な方法は、他者に相談することです。

自分の思考を言語化し、整理し、外から新しい意見を取り入れることで、今までに無かった考え方ができる可能性が高まります。

とはいえ、言うは易く行うは難しであり、人に相談することは案外難しいものです。

自分の悩みを打ち明けることは照れくさいですし、そもそも相談するにふさわしい相手を見つけることも簡単ではありません。

自分の背景も知らずにアドバイスされたときには、抵抗感が一段と強まって自己正当化するために意見を固定させてしまうでしょう。

困ったら相談すればいいとよく言われますが、「相談する側」も「相談される側」にも非常に高度な技術力が求められます。

そのため、自己受容を進めるときは相談相手を見つけるとともに、相談する技術を磨いていってください。

立ち止まったらいつでも相談できるという状態であれば、自己否定したい自分を見つけても柔軟に向き合えるようになります。

準備中:コーチングとは

視野⑤:セルフコンパッションを身につける

セルフコンパッションとは、自分を他人として捉える思考方法です。

たとえば、テストで赤点を取って悲観的になっているとき、友人が同じ状況だったらなんて声をかけるのかを考えて、友人に対してと同じように自分に接するということです。

  1. 赤点取った。私の人生はもう終わりだ
  2. 友人だったら「次がんばればいいじゃん」と言うかなぁ
  3. 今回は失敗したけどそれほど悲観的にならなくてもいいかも
  4. よし、今回のことを教訓にして次はがんばろう

ネガティブな結果は主体者であるほど過度に悪く評価してしまい、否定的な態度を促します。

セルフコンパッションによって客観視できれば、結果を適切に評価できて楽観的に捉えられて受け入れやすくなります。

セルフコンパッションを身につけるには、「未来の手紙」というワークがおすすめです。

次のステップで未来の自分に相談することで、現状を客観視するスキルが向上していきます。

  1. 10年後の理想の自分像を設定する
  2. 理想の自分宛てに現状の悩みを手紙で相談する
  3. 理想の自分になったつもりで現在の自分宛てに手紙で返信する
  4. 現在の自分に戻ってその手紙を読み、もう一度考え直してみる

準備中:理想の自分像

期待を下げて自己受容を促す方法5選

ここでは、自己受容を促すために自分への期待を下げる方法をお伝えしていきます。

期待①:自分軸の理想を描く

自分への期待を適切なものに修正するには、自分軸の理想を描くことが有効です。

自分にとっての幸福な未来に焦点を当てられるようになると、外の価値観に振り回されて焦らなくなり、理想に向かって前進することだけに専念できるようになるためです。

たとえば「早くお金を稼がなければならない」という焦りは、本当に餓死する可能性に怯えているわけではありません。

以下のような、外側の価値観を満たせなくなることが原因で焦っているケースが多いです。

  • このままでは友人にバカにされてしまう
  • このままでは子供を塾に通わせられなくなる
  • このままでは実家に帰省しなければならなくなる

焦りの原因を手放すためには、「自分は何が大切でどんな未来を実現したいのか」を明確にしておくことが重要です。

思い通りにいかない現状に強い不満が生じているときは、自分軸の理想を丁寧に描き、焦る必要性を検討してみることをおすすめします。

準備中:価値観の見つけ方

期待②:マイルストーンを設置する

自分への期待を修正するには、遠くではなく1歩先の自分と比較することが有効です。

現状の自分を1歩先の自分と比較することで、次のような報酬感を得られて焦りが小さくなるためです。

  • 成長している感覚
  • 計画が進んでいる感覚

そのためにも「私は前に進んでおりこの道は目的地につながっている」と感じられるような、マイルストーンを設定してみてください。

「1つ先のマイルストーンに全力で進めばいい」と安心できれば、焦りがなくなり現状の自分を冷静に受け止められるようになります。

★遠くを見過ぎる
遠くにある富士山に向かって歩いても、距離が縮まっているのかが分かりません。
これと同じように、遠すぎる目標や理想だけを見ていると、前進している感覚が持てずに焦りが生じます。
本当にこのままでいいのかと不安になり、早く目的地に到着したいと焦ってストレスが高まって、現状を否定的に捉えるようになるでしょう。
行き先を決めるときは遠くを見るべきですが、実際に進むときは「歩くこと」「近くの目印」「風景」に集中することが大切です。

準備中:計画の立て方

期待③:今の自分を誰かに受け入れてもらう

「こんな私ではダメだ」と否定的な態度をとる原因の1つに、他者に受け入れられたい欲求が挙げられます。

たとえば「かわいい自分でないと見捨てられる」という感覚があると、かわいくない自分に対して否定的になるということです。

他者に受け入れられない一面を受容するには、そんな自分でも受け入れてくれる人がいるということを経験することが有効になります。

その体験は自分が設けている「他者に受け入れられる条件」を軟化させ、自分に困難な期待をしなくなるためです。

ただし、手放しで自分を受け入れてくれる他者と巡り合えることは、そんなに簡単ではありません。

他者に受容されることを待つのではなく、まずはこちらから他者の良い部分も悪い部分も受け入れて付き合ってみてください。

期待④:ロールモデルを徹底的に分析する

ロールモデルを分析することで、期待を適切なものに修正できます。

私たちはよく成功者のことをスーパーマンのように見て、「自分もそうならなければうまくいかない」と誤った認識を基に期待を高めているためです。

★ロールモデルを分析して確かめたいこと
・成功の裏にある泥臭い努力と無数の失敗
・尊敬する人が持つ苦手なことや弱み、他者に嫌われている現実

「ロールモデルももとは自分と同じような人間である」と理解できれば、自分の弱みも受け入れやすくなります。

「自分は特別にダメな人間だ」と感じたら、徹底的に他者の背景を分析してみてください。

準備中:ロールモデルの見つけ方

期待⑤:「いい自分」と「悪い自分」の理由を考える

自分への期待を下げるには、期待に応えなければならない理由を検証することが有効です。

「期待に応えられなくても大きな問題は起きない」と確かめられれば、「そんな自分でなければならない」という強迫観念による期待を手放せるためです。

期待に応えなければならない理由を検証するには、「いい自分」と「悪い自分」に隠れた目的を見つけてみてください。

★期待する目的を明らかにするための問い
・良い自分であると何が起きて何を得るのか
・悪い自分であると何が起きて何を失うのか

「都合のいい自分」「都合の悪い」がいても、「存在していい自分」「存在して悪い」はいません。

「良い自分」と「悪い自分」を切り分ける必要性を見つけ出し、改めて自分と向き合ってみてください。

次の2つのことに納得できれば、現状の自分を受け入れられるようになるでしょう。

  • 「そうありたい」のであって「そうでなければならないわけではない」
  • 「そうありたくない」のであって「そうあってならないわけではない」

準備中:否定的な目標は悪いのか

現状に納得して自己受容を促す方法5選

ここでは、自己受容を促すために現状に納得する方法をお伝えしていきます

現状①:感謝日記を習慣にする

現状を受け入れるには、現在の「ない」ではなく「ある」に焦点を合わせることが有効です。

満たされている欲求に目を向けることで、「それほど悪くないか」と満足感が生じるためです。

「ある」に焦点を合わせるには、感謝日記をおすすめします。

他者に対する感謝を毎日5つ書き続けることで、恵まれていることを認識する能力が養われるでしょう。

現状②:努力量と成果物を棚卸しする

現状を受け入れるには、現状が理不尽なものではないと納得することが有効になります。

行動と結果が釣り合っていると分かれば、大きな不満は起きずに「まぁこんなものか」と現状を受容できるためです。

現状が理不尽なものではないと理解するには、努力量と成果物の棚卸しをおすすめします。

「成功や失敗などの成果物」と「費やした努力量」を比べることで、客観的に結果を受け止められます。

★頑張った感
自分がいくら頑張ったと考えていても、成功者はその何倍もの努力をして成果を得ているというケースがあります。
「成功するための努力として相応しいか」を確かめることが重要なので、「自分の感覚」だけで判断しないように注意しましょう。
・成功するための努力として相応しい:成功に必要な努力量<実際の努力量
・成功するための努力として相応しくない:実際の努力量<成功に必要な努力量

準備中:自己正当化の直し方

現状③:自分の成長可能性を検討する

今の自分は成長過程であると認識することは、現状を受け入れるために有効です。

「今は完璧であるわけがない」と納得することで、自分のできていない部分を真摯に受け止められるようになるからです。

成長過程であると認識するには、成長可能性を検討することをおすすめします。

次のことを把握することは、今が頭打ちではないと認識するきっかけになるでしょう。

  • 一般的な成長速度
  • 一般的な成長サイクル
  • 成功者のそこに至るまでの努力量

準備中:自己成長とは

現状④:現在の満足度合いを数値化する

現状を受け入れるためには、自分の状態を再認識することが重要になります。

私たちは自分の満たされ具合を厳密に把握しておらず、直感的な欲求不満に陥りやすいためです。

たとえばお腹が空いたとき、程度に関係なく欲求不満として捉えてしまいます。

しかしもし、「口が寂しいだけ」と把握できれば、欲求不満ではないと理性的に考えられる可能性が生じるでしょう。

これと同じように、自分の現状を厳密に認識することは、今を受容するために有効です。

次の6つの問いを自問自答することは、満たされ具合を明確にする際に役立つのでお試しください。

  1. 何が満たされていないのか
  2. 今は100点満点中何点満たされているのか
  3. 100点満点とはどのような状態なのか
  4. その点数が取れている理由は何なのか
  5. 本当は何点あれば満足できるのか
  6. それは何故なのか

現状⑤:自分の人生を物語として捉える

自分の人生を物語として見ることで、現状を深刻に捉えなくなり受容しやすくなります。

自分の人生に正解はなく、起きる出来事はネタであり、未来はどうとでも変えられると納得できるためです。

自分の人生を物語として捉えるには、次の2つの手順を試してみてください。

  1. 現状までの物語を描く:今までの自分の物語を書き出す
  2. 現状からの物語を描く:現在の壁までたどり着いたら、「そこからどんなきっかけによりどこにたどり着くのか」というその先の物語を描く

今の自分が面白いと思える物語を作れれば、現状を受け入れるとともに、物語を進めることへの意欲が湧いてきます。

自分の物語を描くときは、神話の基本的な流れであるヒールーズジャーニー理論を活用することをおすすめします。

★簡易的なヒーローズジャーニー理論
展開①:きっかけ
展開②:決断
展開③:実際に起こした行動
展開④:出会い
展開⑤:立ち塞がる試練
展開⑥:試練をクリアするための努力と成長
展開⑦:変化による試練の達成
展開⑧:試練の達成による成果

準備中:理想の人生

自己受容の阻害要因4選

ここでは、自己受容のよくある阻害要因についてお伝えしていきます。

自己受容が上手く進まないと感じたら、まずはこの阻害要因の有無を確かめてみてください。

障害①:完璧主義

期待通りの自分でないと受け入れられないという態度は、完璧主義によるものです。

完璧主義は高い基準を自分に設定し、「基準に達したら〇」「達しなかったら×」と評価します。

「どの自分を受け入れるべきか」と分別しているうちは、ダメな自分を受容できません。

完璧主義であることに気づいたら次の2つのことを検討して、隠れた強迫観念と向き合ってみてください。

  • なぜその高い基準でなければならないのか?
  • その高い基準に達しないとどんな悪いことが起きるのか?

準備中:完璧主義を手放す方法

障害②:失敗体験

過去の失敗体験により、次のように自分全体を否定的に捉えてしまうことがあります。

  • 私は汚い人間だ
  • 私は周りより劣っている
  • 私は誰にも必要とされない
  • 何をしてもどうせ何もうまくいかない

「いい部分も悪い部分もある」のではなく「私は悪い部分しかない」と歪んで捉えるため、自分を受け入れづらくなります。

過去の失敗体験により自己否定的感情が強まっているときは、自分を正しく認識することが重要です。

まずは自分への認識を言語化して、その認識がどれほど正しいのかを検証してみてください。

準備中:成功体験の作り方

障害③:他者批判

他人への評価をしていると、その評価を自分にも当てはめるようになります。

自分が常に評価されている感覚になり、自分の欠点への拒絶感が増してしまうのです。

評論家気質をやめるには、評価せずにはいられない理由と向き合い、評価することを手放して自分の人生に集中することが必要です。

しかし、評論家気質をやめるには時間を要するため、まずは相手の美点や可能性を評価する習慣を身につけてみてください。

  • 減点方式:ダメな点、欠点、短所/弱み
  • 加点方式:良かった点、美点、長所/強み

準備中:評価されるのが怖い

障害④:他者との比較

「私よりすごい人がいる」と自分が劣っている感覚により、自己否定感が強まることがあります。

「勝ち負けの世界」で生きていると、「劣っている=生存できない」と認識して自分に価値を見出せなくなるためです。

しかし、世界チャンピオンだけが、生きる意味や資格を持っているわけではありません。

人間社会は弱肉強食ではなく、共存の世界です。

  • 勝ち負けの世界:勝者だけに役割があり価値がある
  • 共存の世界:すべての人に役割があり価値がある

他者比較はあくまでも、理想の方向に進むための薪として活用することをおすすめします。

誰かとの勝ち負けに固執しているときは、その比較理由と向き合ってみてください。

準備中:他人と比較する癖をやめる方法

個人事業主に自己受容が必要な理由3選

ここでは、個人事業主と自己受容の関係性についてお伝えしていきます。

理由①:失敗を活用するため

失敗を活用するためには、自分のミスを受け入れることが重要になります。

失敗した事実を拒絶すると次のような他責思考が生じて、自分を改善する意欲が低下するためです。

  • 今回はたまたま運が悪かっただけ
  • 私よりも〇〇さんがミスしたから負けた

失敗を受け入れるには、次の2つの方法が役立ちます。

  • 目先の勝負よりも重要な目標を設定する→勝負よりも成長
  • 失敗は前進を加速する薪になると理解する→失敗は怖くない

失敗を受け入れられないときは、どんな感情や行動や思考をしているのかを言語化してみてください。

自分のミスを拒絶する理由が把握できれば、失敗と向き合いやすくなります。

準備中:失敗の乗り越え方

理由②:適切な努力を促すため

自己受容をすることで、自分に必要な課題に取り組めるようになります。

適切な努力を促すためには、次の2つのことを受け入れる必要があるためです。

  • 自分の未熟さを受け入れる→1歩先に進むための課題と向き合える
  • 自分の強みと弱みを受け入れる→改善よりも強化に切り替えられる

私たちは「ダニング=クルーガー効果」により、自分の能力を過信する傾向にあります。

この認知バイアスを取り除かない限り、慢心して自分に合った努力を面倒くさがるようになるのです。

※ダニング=クルーガー効果
「スキル練度が低いうちは自分の能力を過大評価する傾向がある」という認知バイアス

とはいえ、自分が未熟であると受け入れることは、ストレスが生じるためそう簡単ではありません。

「できている部分」も「できていない部分」もあると理解するためにも、次の2つの基準を用いることをおすすめします。

  • 大きな基準:その業界全体の基準(上は世界チャンピオン、下は初心者)
  • 小さな基準:自分だけの基準(上は1歩先の未来の自分、下は1歩後ろの過去の自分)

例.学校の部活ではスタメンで一番強い
・慢心①:私は一番優れているから頑張る必要はない
・慢心②:私は一番優れているから基礎練習はもう卒業していい
・自己受容:日本という尺度で見たら当然下から数えたほうが早い
・自己受容:〇〇はまだ課題だが先月よりも確実に上達している

準備中:アドバイスを受け取れない人の心理とは

理由③:自由に生きることを許可するため

自由に生きるとは、自分の価値観を尊重した生き方をするということです。

しかし、私たちは外側の価値観に振り回されがちで、自由に生きようとする自分をなかなか許せません。

「自分の価値観を尊重すること」ではなく「自分の価値を維持すること」を目的に、自分らしさのない行動ばかりに力を注いでしまいます。

★自分の価値を維持するための行動
世間的に正解な行動は選びやすく、それと異なる行動には葛藤が生じやすい。
・進学する↔留学する
・就職する↔夢を追う
・結婚する↔独身でいる
・子育てする↔人生を満喫する

この葛藤の正体は、「他人に許されないこと」ではなく「他人に嫌われる自分を許せないこと」です。

みんなから愛される自分でなければ受け入れられないため、外側の価値観に振り回されて義務としての行動を選んでしまいます。

自由に生きるためには、自分が自由に生きること、そこで生じるさまざまな自分を丸ごと受け入れることが必要です。

自分の願望を実現したいときは、まずはその願望を許さない自分と向き合うようにしてみてください。

準備中:精神的な成長を遂げる5ステップ

自己受容の注意点

ここでは、自己受容を進める際の注意点についてお伝えしていきます

注意点①:下手に自己受容すると働く動機を失う

多くの人が持つ働く理由やがんばる動機は、外側の価値観によるものです。

そのため、自己受容が進むとがんばるための動機が機能しなくなり、何もする気が起きなくなるケースがよく生じます。

しかし、がんばる必要がないから何も行動しないと、確実に不幸な人生に突き進んでいきます。

「ありのままの自分を受け入れること」と「今のままでありつづけること」には違いがあるのです。

  • ありのままの自分を受け入れる:私には満たせれている部分も不満も確かにある
  • 今のままでありつづける:めんどくさいからこのままでいいや

再び働く動機を得るためにも、「自己否定的な動機」から「自己実現的な動機」に切り替える必要があります。

  • 自己否定的な動機:欠点の改善、外側の価値感からの評価
  • 自己実現的な動機:強みの強化、自分の価値観の尊重

とはいえ、自己実現的な動機はすぐに見つかるものでもありません。

まずはその動機を見つけるために、7割の力で今まで通りに働いて、3割の力で自分の人生と向き合うことをおすすめします。

準備中:やりたいこと探しを終わらせる方法

注意点②:自己受容が原因だと安易に決めつけない

何か問題があると、その原因を自己受容や自己肯定だと捉えるケースがよくあります。

しかし、その多くは自己受容ではなく、単に能力不足や決断不足が原因です。

例.在宅ワークが捗らない
・自己肯定が原因:自分への自信がないからやる気が出ないんだ
・自己受容が原因:起業する自分が許せないからやる気が出ないんだ
・能力不足が原因:何をすればよく分かっていないからやる気が出ないんだ
・決断不足が原因:全力で働くことを決めきれていないからやる気が出ないんだ

自己受容には多くの時間を要するため、リソースの無駄になりやすいです。

目の前に問題を抱えているときは、まずはもっとも早く簡単な解決方法から試してみてください。

課題に対してどのアプローチをするか検討するときは、コーチングを活用することをおすすめします。

準備中:目標達成にコーチングが有効な5つの理由

注意点③:3週間以上悩んだらカウセリングを受講しよう

自己受容が絡む問題には、深刻な精神的な問題が潜んでいることがよくあります。

そのような複雑な問題を自力で解決しようとすると、むしろ悪化しかねません。

近くの人に相談しても悩みが一向に改善されない場合は、カウンセリングを受診してみてください。

自力でカウンセラーを見つけられないときは、「自分に合ったカウンセラーを見つけること」を目標にしてコーチングを受けることをおすすめします。

まとめ

自己受容のステップは、以下の通りです。

  • ステップ①:自己否定の対象となっている自分を見つける
  • ステップ②:自己否定していることを受け入れる
  • ステップ③:自己否定している自分をどうしたいのかを明確にする

このステップを進めるためには、次の3つの方針が考えられます。

  • 方針①:視野を広げる
  • 方針②:期待を下げる
  • 方針③:現状に納得する

自己受容が必要だと感じたら、まずはその理由を検討してみてください。

もっと早く簡単に解決できる対処法があるのであれば、そちらから試すことをおすすめします。

自己受容を進める必要があると判断しても、1人では一向に改善できないと感じたらすぐにでもカウンセリングを受けましょう。